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第7回  (平成14年9月号)

横暴な株主が職場を乱して経営危機に陥りそう…

SRアップ21京都(会長:山崎 忠夫)

相談内容

S社はA社長が、平成6年に個人事業として開業しました。
A社長の夫は建築会社を経営しており、S社社長の妻を評して、実益と趣味が高じて会社経営をしている程度の受け止め方をしていました。 たしかに、奥様であるA社長には事業欲がある訳でもなく、昔を知る人からは”暇つぶし”しているようだったと聞いています。
ところが、取り扱っている商品がタウン情報誌や口コミで広がってくると、A社長の弟Mが頻繁に訪れるようになりました。 暫くすると、Mが自分も出資するから法人化をしたらどうか、と進めたこともあって、開業2年目の平成8年に株式会社へと組織変更をすることになりました。

法人登記に向けての手続きは順調に進んでいましたが、役員選任については意見の対立があり次のように決まりました。
代表取締役に創業者のA氏、取締役には創業当初よりの社員2名、取締役就任を主張したM氏は営業課長ということで落ち着きました。
その後の業績も順調に推移していることから、多店舗展開の第一弾として、2号店を市内中心部に開設した頃のことです。
A社長は、事業欲に目覚めたのか、別人のように働き始め、早朝から深夜まで、取引先との交渉、商品管理業務まで社員が心配するほどの働きぶりでした。
そんな無理がたたってか、A社長は体調を崩してしまい、ついには出社もまちまちとなりました。

こんなことがあってからは、Mは営業課長の身分を越えて、商品の仕入や販売価格の設定はもとより、給与関係、諸経費の決済、さらには人事にまで口を出すようになりました。
自分が気に入らないアルバイトを解雇したり、気に入ったアルバイトには、時間給アップを約束したりと目に余る行動が多くなってきました。
社長の留守を預かる2名の取締役も、社長の弟であり、株主であるMを制止できません。
このままでは、S社の経営すべてをMが牛耳るような事態となってしまいます。 また、Mは交際費の名目でかなりの経費を使っているようすです。

相談事業所 S社の概要

創業
平成8年 

社員数
36名(うちパートタイマー26名) 

業種
手作り小物を中心としたバラエティショップ

経営者像

59歳の女性社長(A氏)、法人化した直後に病に倒れ、会社は無保険状態


トラブル発生の背景

中小企業に多く見られる【身内】【株主】への対応をどうすればよいのか、またその権限はどこまであるのか。
S社では誰も正しい知識を有していませんでしたので、Mの言動に終始押されっぱなしの状態でした。

A社長を始め、取締役の2名は、経営者としての知識や経験がなく、「自分が先頭に立って働く」ことはできても、社員を教育する・指導するという能力に欠けていたようです。
S社は法人化したばかりで、個人商店の家族主義的な環境をそのまま引きずっていました。職務分掌などのルールが明確に制度化されていなかったし、法人成り草創期で仕方なかったのかもしれませんが、早急に対策を立てる必要がありそうです。
企業のコンプライアンス全体について、早急に取り組むことが必要です。
例えば、税務知識も不充分で、交際費の範囲や限度額などがあることも知らないようです。

今回は中小企業における「株主・親族の立場と権限」という問題を切り口に、SRネット(social resources net work)京都が専門的な解説を含め、問題解決の手順をご紹介いたします。

経営者の反応

病床にありながらも、取締役2名を叱咤激励していますが、最後はやはり専門家に問題解決を依頼することが最善の策であるとの結論に達しました。
たまたま取締役のひとりが、かつて社会保険労務士資格を目指していた経緯があり、知人からSRアップ21を通じ、SRネットに相談することになりました。

  • 弁護士からのアドバイス
  • 社労士からのアドバイス
  • 税理士からのアドバイス
  • ファイナンシャルプランナーからのアドバイス

弁護士からのアドバイス(執筆:渡辺 哲司)

依頼を受けてS社を訪問すると、株式会社とは言いながら、個人経営時代の経営方式の悪しき面をズルズルと引き続いているように思われました。
A社長と2名の取締役の方は、早急にこれまでの認識を改め、株式会社の本来の経営のあり方について、正しい知識を身につけて、実務的には社会保険労務士や税理士、FPの支援を受けながら、健全な体制を確立する必要性を理解したようです。

そこで、基本的な法律知識を知っておくために、以下のポイントを説明しておきました。

 

ポイント1 株主は、会社経営の業務執行に口出しできない
株主は、株主総会に出席して株主の権利を行使するなど、商法が定めている事項以外には、会社の業務執行に口出しができないのです。
即ち、会社の業務執行は、A社長と2名の取締役によって構成される取締役会の決定により、その権限と責任において、遂行されるべきものです。
そして、A社長は、取締役会で選任された代表取締役として、取締役会の決定と委任をうけ、社内的にも対外的にも、会社を代表して一切の業務執行を行う権限があることをしっかりと理解しておくように指導しました。

 

ポイント2 取締役会の重要性
A社長(A氏も取締役である)と2名の取締役は、前述の取締役会での権限と責任を自覚し、A社長や取締役の決定、指示がスムーズに行なわれるようにしなければなりません。
そのためには、必要な取締役会を頻繁に開催し、必要事項を決定し、全社員に周知徹底する社風を、1日も早く確立することが必要です。
A社長と2名の取締役は、これまで株式会社の経営者としての知識と経験なかったようですが、それではすまされません。
早急に会社の経営者としての知識を身につけ、自信をもって、M課長や社員を指導できるようにして下さい。

 

ポイント3 M課長の会社内の地位を、どのように考えればよいか
M課長は、株主でありA社長の弟であるという立場と、会社内の営業課長という立場を併有しています。
しかしながら、株式会社の経営業務執行にあたっては、前述のとおり、M課長は、株主という立場からは、何ら権限を有していないのですから、会社としては、M課長を株主として特別扱いしてはいけないのです。
つまり、M氏は、「S社の社員としての営業課長である」という以上の言動をしてはいけないのです。 ましてA社長の弟という立場を考慮した特別扱いなどは、組織としてあってはならないことです。

このことは、極めて大切なことで、A社長、2名の取締役、M課長、他の全社員に周知徹底する必要があります。
特に、M課長には、前記の認識が全くなく、「自分は株主でA社長の弟だから、A社長の出社が十分でないから、自分が営業全般について権限がある」と思い込んでいるようですので、A社長と2名の取締役は、共同してM課長の思い込みの誤りを指摘し、M課長の認識を改めるよう指導すべきです。

 

ポイント4 職務分掌の明確化、就業規則の制定など
M課長が、給与、人事、商品の値段の決定等、広範囲に口出しをし、更には業務全般を決定するまでに至っているようですが、健全な会社経営のあり方からして、M課長の横暴を一日も早くやめさせなければなりません。
そのためには、職務分掌を明確にし、就業規則、服務規則等を早急に作成すべきです(これらの作成、制度化は、社会保険労務士が担当します)。
そして、会社全体としての指揮命令系統と、M課長のみならず、全社員の職務分掌を明確にし、各社員(M課長も含む)は、この職務分掌に従った範囲内で、業務上の権限を有し、また責任を負うことを明確にすべきです。

 

ポイント5 M課長が、従前の言動を改めないとき
M課長が給与や諸経費、人事、商品の値段決定に口を出すことは、営業課長の立場からして許されることではありません。
アルバイトをやめさせたり、気に入ったアルバイトの時間給アップを約束したりするなど、もっての外です。
職務分掌の明確化、就業規則、服務規律等を作成し、社員に明示すれば、M課長の言動がこれらに違反することが明らかとなります。
M課長がこれまで同様の言動をしたとき、A社長、2名の取締役は、M課長に対し、この違反を理由として、就業規則における懲戒に関する条項に従って、譴責、減給、出勤停止等の処分をすべきです。
それでもなおM課長の言動が改まらないときには、解雇処分とすべきことになるでしょう。

株主であり、A社長の弟だとしても、会社の就業規則等により、他の社員と同様に扱うべきは当然のことです。そこに私情をいれることは許されません。
このような労務管理が実施できれば、他の社員も気持ちよく仕事ができ、それが会社の発展の基盤となると思います。

社会保険労務士からのアドバイス(執筆:掘  晴美)

個人事業として、少人数の社員と家族的な雰囲気で経営が成り立っているときはそれなりの良さもあり、商品管理や労務管理にも目が行き届き、おそらく何の問題もなかったことと思われます。
しかしながら、事業の規模が大きくなり、社員の数が20人、30人と増えてくると家族的雰囲気の中で、「まぁまぁ」といった、いわばぬるま湯的経営では、今回のようにたちまち問題が噴出してきます。 会社の雰囲気を「家族的」というのは、聞こえは良いかもれませんが、これからの市場競争に勝ち抜いていく企業としては、時には命とりになります。
特に、急成長した会社にありがちですが、社長の気持ちと会社の実態とがかけ離れたものとなってしまいます。
今後、ますます会社の規模が拡大していった場合には、組織を改編し、役員・社員の役割分担を明確にしたうえで、社長は組織を統率していかなければなりません。
弁護士がいろいろな問題点を整理しましたので、そのうち私が担当する2つの問題点とその解決策をご説明します。

 

一つは、役員2名と社長の身内であるМ営業課長の職務の明確化、権限内容があいまいであるということ。
二つ目は、社員を雇用していく上での労務管理ができていないということ。

 

 

一つ目の問題点は、社長不在時におけるその職務をだれが代行するのかということが、日頃から明確にされていなかったということ。 その結果、取締役2名がいながら、社長の身内であり、株主だからということで、М営業課長に取締役が遠慮してしまったことが、この問題の原因です。
取締役の2名については、「組織における自己の立場と職責を自覚する」ように、また、社長には「役員を信頼し、権限委譲をすること」が基本的な認識であることを強調しておきました。
とかく身内が社内にいると情に流されてしまいがちですが、そこははっきりと組織の機能を充分に果たすべく、体制を整えておかなければなりません。
さらに、企業が内、外部環境の変化、トラブルにスムーズに対応していくためには、指揮命令系統を統一すると共に、職務分掌を明文化し、権限及び責任の所在を明確にしておくことが必要です。

二つ目の問題は、М営業課長が給与関係、人事にまで口を出し、恣意的感情でアルバイト解雇するなど、人事権限がないにもかかわらず、また、社長であってもやってはならないことをやってしまったことです。
まず解雇についてですが、社員等の解雇権は代表取締役または、使用者の立場にある取締役等が行うべきことです。
しかし、解雇権があるからといって、解雇の濫用は避けなければなりません。
自分が気に入らないアルバイトを理由もなく解雇するのは権利の濫用にあたります。 (※判例)会社は解雇する必要がある社員がいる場合、その社員が是正すべきところを、注意し教育をして、解雇を回避する努力を最大限しなければなりません。解雇というのは、社員の生活をいきなり奪うことであり、また精神的にダメージも与えます。「解雇は最終手段」ということを認識しなければなりません。

※ 判例 日本食塩事件(昭50.4.25 最高裁判決)
「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」

 

次に雇用管理上の問題点についてですが、労働条件については、社員一人ひとりの経験、能力にあった決め方をし、とくに賃金についてはデリケートな部分でもあり、公平に扱うことが大切です。 気に入った人だけの時給アップをするなどは論外です。

評価についての基準を定め、昇給の時期、昇給の方法等を賃金規定において明確にしておく必要があります。
賃金に関しては、一定のルールに従って運用することが大切です。それによって、労使の信頼関係も生まれ、職場内の協調体制ができ、社員のモラールアップにもつながります。

常時使用労働者数が10人以上の会社は就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出る義務もあります。 (労働基準法第89条)
社員数はパートタイマー、アルバイトも含めての数ですから、S社は当然就業規則を届出しなければなりません。

就業規則は会社のルールブックであり、労働条件や職場の規律を定めることで、労使の権利義務が明文化されます。
また、労使紛争が生じた時、就業規則が根拠となります。国家に法律が必要であるのと同じように、会社の法律である就業規則は、会社と社員の信頼関係を築く上でも必要なことです。

最後に労働保険、社会保険の加入についてですが、S社は当初個人事業でしたが、労働保険に関しては個人事業の場合でも、一人でも社員を雇用すれば強制的に加入しなければなりません。(農林水産業等一部を除く)
社会保険に関しては個人事業で、社員数が5人以上の場合は、一部の業種を除いて強制適用となります。
また、法人の場合は社長一人でも強制適用になります。S社の場合、個人事業であった時には、社員数が5人を超えた時点、また、法人成りした時点で強制適用となっていたはずです。 

アルバイトに関しても、1日の所定労働時間が、社員のおおむね4分の3以上、および所定勤務日数が社員の所定勤務日数のおおむね4分の3以上である場合は原則加入しなければなりません。
業務上の傷病、また、私傷病の場合において、パートタイマー、アルバイトを含めて労働保険、社会保険に加入することは社員にとって大きな安心となります。
パートタイマー、アルバイトの中には、ときおり社会保険には加入したくないという人がいますが、私傷病の場合には健康保険から傷病手当金の受給が可能です。また、年金制度については、将来の不安があるように感じておられるようですが、国の制度である以上、制度が崩壊することはありえないことですし、相互扶助の社会保障という観点からも、加入しておくことは本人のためでもあります。

以上のような説明と併せて、職務分掌規定を含めて就業規則等諸規定の起案・作成、労働・社会保険への加入手続を進めました。

税理士からのアドバイス(執筆:安田  徹)

S社の社長には、個人から法人化した場合の税務上の違いと、弟であるM営業課長の行動につき、税法上の取扱いを説明し、その問題点を指摘しました。

 

個人から法人化した場合の主な税務上の違い
個人の場合は、簡易な帳簿でも認められるが、法人は複式簿記により、個人と会社を明確に区別すること。
個人の場合は、所得が多いと率が高くなるが、会社は原則として定率であること。
個人の場合は、課税後の所得が事業主報酬となるが、会社は正当額が報酬として認められ、その報酬は給与所得控除後に所得税課税となる。
個人の場合は、家族給与を前もって届出、正当額は認められるが、配偶者・扶養控除の併用はできないが、会社は正当額ならよく、103万円までなら配偶者・扶養控除も認められる。
個人の場合に較べて会社は、生命保険や損害保険が費用として認められる場合が多い。
個人の場合は、交際費が正当額なら限度がないが、会社の場合は、資本金により差はあるが、限度額がある。

 

同族会社の使用人について
同族会社の使用人のうち、次のいずれにも該当する者で、法人の経営に従事している者は法人税法上「みなし役員」とされます。
イ、 同族会社の持株割合の多い株主グループから、順次3番目までのものの割合が、初めて50%以上となった場合のその株主グループに所属していること
ロ、 その所属する株主グループの当該会社における持株割合が10%を超えていること
ハ、 当該使用人とその配偶者を合わせた持株割合が5%を超えること
M営業課長は、イ、ロ、ハのいずれにも該当しますので、「みなし役員」となります。
よって、毎月の給与は役員報酬となり、賞与は役員賞与となります。
法人税法上、役員報酬はその従事する業務に照らして適正な額は原則費用として認められますが、役員賞与は費用とはなりません。

 

 

次に、法人税法上の「交際費等」について説明します。
「交際費等」とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。とあり、会社の規模によって、次のように、一定の限度額が費用として認められています。

資本金が1000万円以下の法人 400万円までの金額の80%
資本金1000万円超5000万円以下の法人 300万円までの金額の80%
 (したがってS社は資本金が2000万円で、これに該当します)
資本金が5000万円を超える法人は交際費等が費用となりません

 

今回のケースでは、M営業課長が交際費の名目で多額を使っているようですが、上記の「交際費等」に該当するかどうかが問題です。
事業に関係のある者等に対する接待等で、実質的には費用対効果を勘案した適正な金額が会社が負担すべき「交際費等」となり、上記限度額計算の対象と考えられます。それ以外のものは、M営業課長の個人的なものを会社が負担したことになり、法人税法上は、役員報酬か役員賞与と解釈することになります。
毎月一定の金額であるような場合は役員報酬となり、それ以外は役員賞与となり費用として認められないことになります。また、その使途が明らかでない場合は、さらに重課税が待っています。

この場合、所得税法上は、いずれであってもM営業課長の給与所得とされることは言うまでもありません。
当面葉は、S社の事後処理と今後の指導に追われそうです。

ファイナンシャルプランナーからのアドバイス(執筆:太田 潔)

S社のケースで役員事業保険、従業員保険、死亡退職金対策等の企業のリスクマネジメントを考えてみました。
その中で、現在役員でもない、A社長の弟M営業課長との株主としてのつながりを断つべく、M営業課長の株式を全て買い取る方法や影響力を減少させる方法をシミュレーションしてみました。

 

【株式買取の対策】
株主Mの持ち株比率が50%以下ならS社の株式を増資することでM所有の株式比率を下げ、M所有の株式売却を迫る方法

例)
現在の資本金2,000万円を4,000万円にすれば持ち株比率は25%以下になりますし、当然1株当たりの単価は下がるわけですから、買い取り資金は少なくて済みます。
もしもMが株式を手放すことを拒否するようであれば、6,000万円に増資額を増す等、金額をどんどん上げていけば1株当たりの単価もそれに従って下がっていき、手放さざるをえなくなります。
こうしてM所有の株式を全部買い取り、目的達成後に減資で元の資本金に戻します。

 

【会社経営を軌道に乗せる対策】
取引先の承認獲得後、A氏の夫が経営する会社にS社を売却あるいは吸収させる。
売却あるいは吸収させれば株主Mの影響力は落ちます。
A氏の夫に社長に就任してもらい、Mの影響力を減少・消滅させます。

 

それでは、リスクマネジメントとしての保険の活用をご提案します。 A社長の病状にもよりますが、基本的に、健康を害している、入院しているなどであれば、A社長本人は保険に入れないか特別条件が付くかということになります。
そこで、以下のように、法人契約と個人契約の両方へのご加入をご提案します。

A社長の夫の年齢は60歳です。

 

法人契約
例) S生命保険会社 平準定期保険の場合
契約者:S社
被保険者:A氏の夫
※A氏の夫はS社の代表取締役になっていることが前提条件
受取人:S社
《参考》
保険種類 払方 保険期間 払込期間 保険金 年払保険料
平準定期保険 年払い 20年 20年 50,000万円 13,800,000円

 

 

契約者(S社)/被保険者(A氏の夫)の契約形態で保険に加入し、一部をA氏の退職準備金にあてる等をすればいいわけです。
その場合、被保険者であるA氏の夫に了解を得る必要がありますが、夫婦なので権利請求などの心配はいりません。 契約時の被保険者の年齢+保険期間×2<105を満たしているので、上記の場合全額損金として取り扱うことができます。
資産形成・積立をしながら保険料の損金算入が可能です。

 

個人契約
資産計上になる終身保険は、個人契約で所有されることをお勧めします。
例) S生命保険会社 終身保険の場合
契約者:A氏の夫
被保険者:A氏の夫
受取人:A氏
《参考》
保険種類 払方 保険期間 保険金 年払保険料
終身保険 年払い 終身/99歳 10,000万円 4,364,700円

 

 

さらに、余力があるようであれば、社員に対する福利厚生の一環として、退職金の準備を養老保険で用意することができます。
通常、利益がでてしまうと、そのうち約40%を税金で支払うことになりますので、来るべき時に備えて、計画的に利益を含み資産として蓄えておく、利益の繰り延べの方法となります。

例) 保険種類:養老保険
契約者:法人
被保険者:役員・全従業員
死亡保険金受取人:役員・全従業員の遺族
解約金・満期金受取人:法人

 

《参考》ご契約例(お1人あたり) 40歳男性
保険種類 払方 保険期間 保険金 年払保険料
養老保険 年払い 60歳/60歳 500万円 237,275円

 

 

S生命の養老保険の場合、保険料を5年お支払いいただきますと、節税効果(1/2損金)を入れた場合、約105%以上の返戻率が得られます。
また、”払済保険”としてそのまま保険会社に解約返戻金を据え置いた場合、満期時にかなり効率よく満期返戻金をお受け取りいただくことができます。
この方法は、福利厚生の側面だけではなく、会社の資金運用の側面も満たしています。

(上記のような)保険活用によるメリット
●役員退職金規定・従業員弔慰金規定を整備し、保険会社が規定に沿って設計することにより、税制上の優遇措置を受けることができる。
●貯蓄性の高い生命保険の保険料の損金算入により、確実な含み資産の形成が可能。

このように形成された含み資産は、自家保険ファンドとしてあらゆるリスクへの対応が可能となります。

社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
SRネットは、全国展開に向けて活動中です。


SRアップ21京都 会長 山崎 忠夫  /  本文執筆者 弁護士 渡辺 哲司、社会保険労務士 掘  晴美、税理士 安田  徹、FP 太田 潔



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