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第45回 (平成17年11月号)

それってセクハラじゃないですか?
「いいえ、個人的な業務指導です」!?

SRアップ21広島(会長:守屋 薫)

相談内容

今日も社長とE子は業界の会合ということで一緒に外出です。営業や会合など何かにつけて、“E子は社長の秘書”のように社長に連れ出されています。E子自身も「秘書じゃないんだけどなぁ…」と腑に落ちないのですが、社長と一緒にいると食事をごちそうになったり、おみやげを買ってもらったりするので、今のところ「まぁいいか」とさほど抵抗感がありません。
一方、E子とぼぼ同期の女性社員たちは、E子からいろいろと話を聞いているので、多少羨ましがったりするものの、不公平感は感じていませんでした。
しかし、徐々に社長の行動がエスカレートしてきたのです。E子と一緒に英会話教室に通ったり、夜の食事も共にしていることや、E子の給与が他の社員よりも“高い”ということが知れ渡るようになってしまいました。そうなってくると、俄然他の社員たちの反応が違ってきました。
「私たちにも食事手当を支給してください」「社内であまりべたべたされると気分が悪い」「給与の査定に不公平感がある」「セクハラじゃないか…」などという不平不満が直接に、また、風の噂で社長の耳に入ってきました。
ある朝のミーティングの時です。「社内で変な噂があるようだが、E子君だけ特別扱いをしているわけではない。私の補助者が必要だから、私の仕事関係を知ってもらうつもりで個人的に業務指導を行なっているだけです。何もやましいところはない」と社長が開口一番話を始めたところ、「E子はおしりを触られたと言っていましたよ」と言う声がして、社員たちが一斉に笑い出しました。

相談事業所 U社の概要

創業
平成12年

社員数
7名(パート 9名)

業種
文房具店

経営者像

郊外に瀟洒な店舗を構えるF社は、文房具からアミューズメントグッズまで幅広い商品を取り揃え、学生たちの人気を集めています。また、3年前に始めた他社との業務提携による文房具等の配達サービスも軌道に乗り、社員のうち4人が20歳台の女性ということもあって、55歳の若い社長はご満悦です。


トラブル発生の背景

社長の本心はわかりませんが、E子に対する言動に行き過ぎたものがあったようです。
実はE子の方が曲者で、社長の前では従順に、同僚の前ではすべての社長の言動を話していたようでした。いずれにしても、セクハラに対する危機管理がなっていない社長のようです。自分が笑い者になっていることが信じられないようでした。
小規模事業所における人間関係の構築方法、給与の決定方法等について、基本から学ぶ必要がありそうです。

経営者の反応

「俺をばかにしているのか!」社長が一括しても社員たちは平気です。「ことが大きくなって困るのは社長ですよ。仕事に個人的な感情を持ち込むなんて最低ですよ」「社長が態度を改めないとみんな辞めますよ」
社長も引っ込みがつかなくなった関係でしばらく社員たちと言い合いをしましたが、「問題になっていることを整理するから、そこでまた話し合おう。まぁ辞めたい奴は辞めてもいいけどね」と何とか強気を繕うと店の外へ出て行きました。
「困ったことになった…」誰に相談できるあてもなく、近くの喫茶店に入り新聞を広げると、“SRネット”の記事が目に飛び込んできました。「ここだ!」と思った社長はすぐに携帯電話を取り出しました。

  • 弁護士からのアドバイス
  • 社労士からのアドバイス
  • 税理士からのアドバイス

弁護士からのアドバイス(執筆:渡部 邦昭)

社長は、どうも、公私混同をしているようですね。最近、企業の経営者に対して、コンプライアンス(法令順守)ということがいわれていますが、社長は、このことをよく理解し、実践する必要があるようです。さて、順番に考えていきましょう。

(1)社長とE子とは、労働契約で結ばれています。E子はF社との労働契約により、F社の社長の業務命令に従って労働する義務がある反面、F社にはE子に対して賃金(給与)の支払をする義務があるということになります。しかし、社長の業務命令について法的な限界があるのは当然のことで、業務命令が業務上必要な合理的な範囲を逸脱していれば、E子は従う必要はありません。一緒に食事をしたり、英会話教室に通ったりしたことが、社長の業務命令の結果で、E子も従わざるをえなかった(従わないと不利益をうけるので)ということであれば、社長の業務指導はゆきすぎでしょう。

(2)社長は、「補助者として必要だから、特別扱いしているのではない」と弁解しましたが、個人的な業務指導というのはあいまいで、誤解の原因になっています。ここは、社長が業務上の必要があってE子を秘書としたいのなら、就業規則の中に職務管理規定のようなものを定めて、社員の職務内容と範囲を明確にして、周知徹底する必要があります。そして、社長は、職務管理規定に基づいて業務指導をしているということを他の社員に説明することができるようにすべきです。

(3)「使用者は業務の遂行に関連して被用者の人格的尊厳を害しその労務提供に重大な支障をきたす事由が発生することを防ぎ、又は、これに適切に対処して、職場が被用者にとって働き易い環境を促すよう配慮する義務がある」(福岡セクハラ事件・福岡地裁平成4年4月16日判決)という判例もありますので、社長がE子の「おしりを触った」とか、「一緒に夜の食事を共にすることや英会話教室に通うことを無理強いした」ということが事実であれば、地位利用型のセクハラということになります。本件が事実ならば、社長は重大な反省をする必要があります。

セクハラとは、セクシュアル・ハラスメント(性的虐たい)の略ですが、労働者の意に反する性的言動で、それによって仕事を遂行する上で一定の不利益を与えたり、就業環境を悪化させることをいいます。労働者の立場からすると、「働きやすい職場環境の中で働く利益」ということを権利として主張できるということですし、そのためにF社の社長は、社員の職場環境を良好に調整する義務を負うということになります。

ある裁判例(京都セクハラ事件・京都地裁平成9年4月17日判決)によると、呉服販売会社で働いていた女性社員の女性更衣室内の状況を男性社員が密かにビデオカメラで撮影していた事件で、「会社は、雇用関係に付随して、女性労働者のプライバシーが侵害されることがないように職場の環境を整える義務があるというべきである。そして会社は女子更衣室でビデオ撮影されていることに気付いたのであるから、会社は再び同じことがないようにする義務があったというべきである。それにもかかわらず、何の措置も取らなかったため、再び女子更衣室でビデオ撮影される事態になったのであるから、会社は、気付いた以降のビデオ撮影によって生じた女性労働者の損害を賠償する責任を負う」と判示しています。(民法715条の使用者責任)

本件のケースでは、E子が社長と一緒に夜の食事や英会話教室に通うこと、さらにお尻に触られることが、社長から不利益をうけないために従っているとしたら、セクハラということになります。そして、この場合、F社の社長は加害者である法人(F社)の代表取締役などの役員ですから、行為者である役員(社長)が不法行為責任を負うのは当然ですが、その法人(F社)も民法44条1項(法人は理事その他の代理人がその職務を行うにつき他人に加えたる損害を賠償する責めに任ずる、ということになります)により不法行為責任が問われることになりますので注意が必要です。ただし、理論的には、勤務時間外に、社長とE子との個人的な交際まで禁じられているわけではありません。
社長たる者は、他の社員から、給与の査定や待遇について不公平感を指摘されないように振る舞う義務があるといえます。よって、業務命令権の延長で勤務時間外に漫然と個人的な業務指導をすることは厳に慎むべきで、公私の分け隔てを明確にするように努めなければなりません。
最後に、E子の給与の決定方法について、他の社員から不公平感をもたれていることについてお話します。

最近では、成果主義が強調されるようになって、社長の人事考課の範囲が拡大しています。法律的には、均等待遇(労働基準法3条)、男女同一賃金(同法4条)昇進についての男女均等取扱い(男女雇用機会均等法3条)、不当労働行為(労働組合法7条)などの諸規定に違反しない限りは、人事考課は査定権者(本件では、F社の社長)の合理的な裁量に委ねられています。そして、査定の妥当性については、査定権者が人事考課を規制する諸規定の趣旨に反して裁量権を濫用したと認められる場合には、不法行為責任が成立することになっています。(光洋精工事件・大阪高裁平成9年11月25日判決)それだけに、社長は社員から給与の決定について不公平感をもたれないように配慮する義務があるのです。社長の給与の決定方法が主観的恣意的でないことを担保するため、人事考課規定を定めて、全ての社員に公開することがよいと思います。このことにより社員に対して、如何なる基準で給与を決めているか、が明確になり、納得性も高まります。

以上のとおり、社長は社員との職場の人間的信頼関係を発展させるためにも、ルール(基準)に従った業務指導(命令)を実践する、ということを自覚し、また日頃から心懸けておかなければなりません。仕事や職場に個人的な感情を持ち込むのは、厳に慎しまなければならないということです。

社会保険労務士からのアドバイス(執筆:松浦 充恭)

企業目的の第一が利益の追求であるから、企業の効率的な運営を事業主が期するのは当然ではありますが、社員のモラールを向上させ、社員の能力を充分に発揮させて、現実の企業業績へ繋げていくためには、事業主が職場の快適な労働環境を整備すべく努力する必要があります。
その整備の第一点は、就業規則や労働契約で明示する賃金・労働時間、教育等、労働条件に関する維持改善です。
第二点は職場の適正で良好な人間関係の構築です。職場は社員相互の協力・共同を必要とする場です。本件は、中小規模の事業場で起こりがちな事件で、適正な労働環境を求める社員と事業主との間で生じています。社員も事業主も会社は事業主の持ち物といった感覚が強く、事業主の言う事には逆らえない、多少の事業主の専横な行為があっても見て見ぬ振りをするといった実体が窺えます。たとえその事が、会社に利することであっても、事業主に嫌われるくらいなら黙っていようとする。しかし、事業主の専横な行動がエスカレートし、社員の均等待遇が無視され、社員の不利益が表面化すれば、社員も黙ってはいないという事態が、F社に発生してしまいました。

■セクハラの定義とその構成要件、本件はセクハラに該当するか否か
セクシュハル・ハラスメントについては、平成11年4月1日に改正男女雇用機会均等法21条で、「事業主の配慮義務」として、はじめて規定され、女性労働者が「性的いやがらせ」でその労働意欲を喪失したり、その能力発揮に悪影響を来たすことがないよう、その目的で作られました。

男女雇用機会均等法21条

事業主は、職場において行われる性的な行動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け(対価型)、また当該性的な行動により当該女性労働者の就業環境(環境型)が害されないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならない。

セクハラの一般的な定義は、「職場での相手意に反する性的行動」をいい、「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」に分けることができます。
〔対価型セクハラ〕:職場において女性が不快に感ずる性的発言や行動がおこなわれ、それを拒否したことで解雇や下減給等の労働条件の不利益を受けること。
〔環境型セクハラ〕:性的な発言や行動が行われることで、職場の環境が不快なものとなり、職務の遂行や能力の発揮などで重大な影響が生じること。

■セクハラの構成要件
1.「職場」の範囲
 通常の就業場所に限らず、業務を遂行する場所であれば得意先、出張先、接待の為の飲食店等も含まれます。職務ではないが、職場が主催する懇親会、慰安旅行、運動会等も実質的に業務の延長線上にあれば、職場に該当すると解すべきです。
2.「相手」の対象
 セクハラは男女の区別なく、双方が加害者にも被害者にもなりますが、男女雇用機会均等法では、女性労働者のみを対象としています。ただし女性が男性におこなうセクハラについても、これを防止していくことは望ましいことであり言うまでもありません。
3.「意に反して」の内容
 相手の同意がなく、相手の意思に反するもの。従って相手が合意していればセクハラには該当しません。ただし、その行為や言動が親愛から出たものであっても、相手が不快や嫌悪を感ずるものであれば、セクハラとなります。同じ行為や行動であっても、Aさんがした場合にはセクハラになり、Bさんがした場合にはセクハラにならないといったケースもあり得ます。
4.「性的行動」の内容
・性的な内容の発言:性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、意図的に性的な噂を流布する、個人的な体験談を話したり聞いたりする等
・性的な行動:性的な関係の強要、身体への不必要な接触、強制わいせつ行為、強姦、ヌードポスターやわいせつ図画の配布、掲示等

本件では、社長が一社員であるE子と職務に関連なく英会話教室に通ったり、夜の食事をするといった行動があり。また、E子の給与が他の社員より高額でその根拠が明確でないといった事実がありました。それが原因となり他の社員から、事業主が不公平な処遇をしていると指摘されました。本件の被害者は一体誰なのか。本件で被害を訴え労働環境の改善を求めているのは、E子ではなく他の社員です。「E子はおしりを触られたと言っていましたよ」と言うのが真実であれば、事業主が「セクハラじゃないですか」と言われても仕方がない訳ですが、事業主のE子への行動が、前記に掲げる全ての構成要件を満足し、セクハラに該当すると断定するには、事実関係の確認が不足しています。
なお、他の社員については、セクハラ問題ではないことは明らかです。

■事業主が配慮すべき事項
1. セクハラ防止の措置:セクハラに関する方針を明確化し、労働者に対してその方針の周知・啓発するよう配慮しなければならない。(例:就業規則や服務心得にセクハラの関する方針を記載する。)
2. 現実にセクハラが起きたことを想定した措置:相談・苦情への窓口を定め、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するよう配慮しなければならない。(例:苦情処理制度をもうける。相談・苦情の対応マニュアルを作成する。)
3. セクハラが生じた場合の事後の措置:セクハラが生じた場合は、その事案に係る事実関係を迅速に正確に確認するよう配慮しなければならない。(例:担当部署を定め、対応手順や被害拡大を防止する対策を定めておく)

■セクハラで問われる法的責任
大別すると加害者に問われるものと、使用者に問われるものがあります。加害者に問われるものとしては、セクハラが強烈なものであれば、強制猥褻(刑法176条)名誉毀損(刑法230条)が適用され、この場合、不法行為責任により民法709条の民事上の損害賠償請求権も発生します。一方、セクハラが業務行為の一環として行われた場合には、会社として法的責任が発生することがあります。判例では、使用者が「労働環境調整義務」を尽くさなかったとして、使用者責任(民法715条)適用された場合と、債務不履行(民法415条)が適用された場合のふたつがあります。

■本件に関するアドバイス、問題解決の方法
○事業主のいない所では、社員の間で会社(事業主)に関していろいろと語られ、知らぬは事業主ばかり、ということばかりではないはずです。小さな職場だからこそ、社員の自由な発言をうながし、事業主を含めた社員同士のスムースなコミュニケーションがとれるような工夫が必要です。たとえば、朝礼で各人の日々の業務計画や問題点を報告させるといったことも職場改善として有効です。
○中小規模の事業場であっても各人の職務分担は明確にし、必要に応じて職位を定め「事業主が個人的な感情で社員を特別待遇する」といった誤解が起きないようにする方策が必要です。
○職場は公的な場所であり、ビジネス優先の場であり、そこでは私的な感情や態度をあまり表面に出さないようにすることが求められます。異性に対して特別な感情を抱くことは自然なことであり、禁止できることではありませんが、常識ある仕事人として、あからさまな行動をとらないように心掛ける必要があります。
 まずは、自らの行動を正し,社内環境の整備から始め、給与決定の方法等ルール作りに取り掛かりましょう。

税理士からのアドバイス(執筆:楠 典子)

本件では、
(1)E子さんに対する給料の概念
(2)セクハラに関する賠償金
(3)企業としての経費のとらえ方
(4)社長への役員賞与、以上4つの観点からアドバイスが考えられます。

まず、最初に給料の概念です。
給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費、年金(過去の勤務に基づき使用者であった者から支給されるものに限る。)、恩給(一時恩給を除く。)及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいいます。(所得税法第28条)
給与として支給されるものに、各種名目の手当等があります。それが労働提供の対価としての性質をもつものである限り、名目のいかんを問わず、給与に該当します。
各種手当等のうちには、超過勤務手当、休日出勤手当、役付手当、職務手当等いわば労務提供の質と量に応じた付加価値給与、すなわち狭い意味で労務の提供に見合った対価とみられるものがある一方で、家族手当、住宅手当、勤務手当など労務提供の程度には直接関連しない生活給的なものもあります。
これらも広い意味で労務提供に対する報酬であり、それらも給与のうちに含まれるのです。
また給料には、現物給与という考え方もあります。
現物給与とは、金銭以外の物、または権利その他経済的利益をもって収入する場合をいい、物品その他の資産の譲渡を無償または低い対価で受けた場合における、その資産のその時における価額またはその価額とその対価の額との差額に相当する利益をいいます。(所得税法第36条、所得税法基本通達36?15)

E子さんの場合、英会話教室に社長と一緒に通ったり、夜の食事を社長にご馳走になったり、おみやげを買ってもらったりと、現金は直接受け取りませんが、上記の経済的利益を受けていることになるでしょう。
ちなみに、食事の場合に、経済的利益とされないのは、1ヶ月に会社が負担した金額が3,500円以下であり、かつ本人が半額以上を負担している場合です。(所得税基本通達36?38、同36?38の2)
また、E子と通っている英会話教室の月謝についてですが、文房具店を営むF社が仮に今後、海外展開を考えており、業務上英語力が必要であるなら、費用計上は可能です。
そればかりか、業務上必要な社員教育の為の経費は、平成17年度の法改正により新設された『人材投資(教育訓練)促進税制』により、一定の要件のもとで税額控除があります。(租税措置法42の12)
しかし、これが業務に関係ないのであれば、英会話教室の月謝は、やはりE子さんに対する現物給与となるのです。
元来、福利厚生費の概念は全社員に対して公平に行われるべきものです。
E子さんだけが特別に食事をご馳走になったり、英会話教室に通わせてもらっているのであれば、これはまさしくE子さんに対する経済的利益であり、現物給与とみなさるのです。
つまり現金はもらわなくても、給料と同等と考えられ、E子さんの源泉所得税の対象となります。
次に、セクハラの損害賠償金についてお話します。
本件では、社長がE子さんのお尻をさわるセクハラ行為があったようですが、基本的に、受け取った損害賠償金は所得税法上、非課税です。(所得税法第9条十六)
つまり、E子さんは損害賠償金をもらっても税金はかかりません。

では、これを負担したF社はどうでしょう。
会社が、その業務の遂行に関連して他の者に与えた損害につき賠償をする場合においては、損害賠償金は会社の損金となります。(法人税法基本通達2?2?13)
例えば、工場で働く社員さんがシステム等の欠陥で機械に巻き込まれた場合などです。
しかし、今回は社長個人の重大な過失により支払うこととなった賠償金ですから、会社の損金にすることはできません。(参照 所得税法基本通達37?25)
ここで、企業としての経費のとらえ方と、役員賞与について、お話しておきましょう。
本件のような損害賠償金のように、社長本人が個人で負担すべき費用を会社の経費とした場合には、社長に対する役員賞与として認定されてしまいます。
役員賞与は法人税の計算上、損金とならないばかりか、社長本人は所得税が加算されてしまうのです。

企業のトップは、会社を私的欲求解消の場にしてはいけません。
健全な経営を心がけ、企業の発展に全力を尽くすことが大切ですね。

社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
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SRアップ21広島 会長 守屋 薫  /  本文執筆者 弁護士 渡部 邦昭、社会保険労務士 松浦 充恭、税理士 楠 典子



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