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第24回 (平成16年2月号)

詐欺罪で告訴か!まずは解雇だ!
会社の制度を悪用した社員の処分は?

SRアップ21熊本(会長:上田 吉勝)

相談内容

U社には生活資金融資として、上限100万円の貸付制度があります。
これはU社の社長が若いときに苦労した経験があったため、社員たちに「できるだけのことをしてやろう」という気持ちで創設したものでした。
車の購入や学資、家電製品の購入など、その用途は問いません。購入を希望する物品の見積書あるいは請求書を添付して経理に提出するだけでした。
返済は社員と相談の上、月々の給与から天引きしていました。
ある日「最近サラ金からの電話が多くて困っています」と経理の女子社員が相談にきました。事情を聞くと、社員Aに対し金融関係2社から1日に数回の電話が入っているようです。社員Aにはつい先月、車購入の頭金として80万円の生活資金融資を行ったばかりでした。調べてみると、車は買っていないようです。社員Aには、さらに過去3回、パソコンやマンションの更新費用として、数十万の貸付を行っていました。どうやらこれもうそのようです。社長が社員Aを呼び出して問い詰めると、「購入予定でしたが、直前にキャンセルしました。返済は毎月給与から引かれているじゃないですか。サラ金からの電話はそのうちなくなりますよ」と悪びれた様子もみせません。
他の社員に聞くと社員Aは、ギャンブル好きでかなりの借金があるようです。社長はサラ金から催促の電話がかかってくるような社員は必要ない、また、制度を悪用された怒りから社員Aに解雇を通知しました。
「本来なら詐欺罪で告訴するところだ。解雇ですんでありがたいと思え…」

相談事業所 U社の概要

創業
昭和51年

社員数
42名 パートタイマー 5名

業種
貨物運送・倉庫業

経営者像

62歳、心優しい創業社長。荷主に恵まれ、不況の運送業界にあって、良好な経営状態を維持している。社員の“質”をモットーに、手厚い福利厚生を実施し、社員の定着を図っている。


トラブル発生の背景

いきなりの解雇通告で果たして問題なかったのか、U社社長の怒りに任せた言動の是非が問われます。
社長が社員の視点で創設した“生活資金融資制度”でしたが、あまりにも手続が簡単すぎて、悪用されやすいものであったことも、今回の騒動の原因でしょう。
いずれにしても、社員Aを解雇する前に、専門家に相談すべき事案です。

経営者の反応

N社長の解雇通告に対し、社員Aは「他の社員もやっていますよ、私だけじゃありません。会社を辞めると、ますますサラ金に返済できなくなってしまいます。何とか解雇を取消していただけませんか」と懇願しました。
社長は「他の社員もやっていますよ…」の言葉で完全に頭にきました。
社員Aを怒鳴りつけ、その場を立去りました。
2?3日後、社員Aから内容証明が届きました。解雇予告手当の支払と訴訟準備のことが書いてありました。
社長は不安になり、以前業界紙でその記事を見たことのある「SRネット」を探し出し、電話をかけました。

  • 弁護士からのアドバイス
  • 社労士からのアドバイス
  • 税理士からのアドバイス
  • ファイナンシャルプランナーからのアドバイス

弁護士からのアドバイス(執筆:高野 正晴)

U社社長の怒ったような、困ったような顔を見た途端、この状態であれば、まずは「詐欺罪」から説明を始めたほうが、冷静になってもらえるかな、と思いました。

さて、社員Aは、車購入の頭金に充てると説明して80万円の貸付を受けながら、実際には車を購入していないのですから、社長が生活資金融資制度を悪用されたと立腹するのもやむをえないと思います。
社長は「本来なら詐欺罪で告訴するところだ」と言っていますが、果たして、生活資金の使途を偽って借り入れた社員Aの行為は詐欺罪に該当するのでしょうか。

詐欺罪(刑法246条)が成立するためには、
 (1) 人を欺いて錯誤におとしいれること
 (2) 欺かれた人が錯誤に基づいて財物などを交付すること
 (3) 欺いた人が財産上不法の利益を得ること
が必要です。

社員Aが車購入の頭金に充てると説明したから、そのように利用するものと思って貸し付けたのであり、ギャンブルやサラ金への返済に利用すると説明を受けていれば、貸し付けなかったのであるから、(1)(2)(3)の要件を満たすようにも思われます。
しかし、社員Aは「車を購入する予定であったが、直前にキャンセルした。返済は毎月給与から引かれている」と反論しています。
よって、生活資金の用途は問われていないこと、給与天引きという返済方法を取っており、社員Aは過去3回も生活資金を借り入れているが、きちんと返済していると思われることから、社員Aの反論も無視できません。

ここで、金銭を借り入れる類型の詐欺罪で重要視されるのは、車を購入することが嘘であったかどうかではなく、返済の意思や能力がないのに、あるように装ったかどうか、という点です。社員Aが車を購入しなくとも返済の意思と能力があれば、詐欺罪にはならないのです。U社においては社員と相談して、給与から天引きするという返済方法を取っており、社員Aも同様の方法により返済する予定であったと思われます。
U社社長は、唖然としていましたが、社員Aは返済の意思や能力がないのに、あるように装って80万円を借り入れたとはいえませんので、詐欺罪は成立しないでしょう。

次に社員Aの解雇について説明しましょう。
U社の就業規則を詳細には見ていませんが、多くの会社の就業規則には「金銭の横領その他刑法に触れるような行為をしたとき」、「会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があったとき」等の定めが就業規則の「賞罰」または「懲戒」「制裁」といった項目に定められていますので、U社にも同様の規定があると思われます。
しかし、社員Aの行為は詐欺罪に該当しませんので、かかる規定によって懲戒を行うことはできません。

また、サラ金からの借入債務があるといった事情は、会社外の問題ですので、U社にとって解雇を相当とするような具体的理由がない限りは解雇理由とはなりません。
社長が言うように、U社には「金融関係2社から1日に数回の電話があり、困っている」という事態が発生していることは、社員Aがサラ金に約束どおりの返済をしていないという意味では、社員Aの責任でもありますが、会社にまで督促の電話を掛けるサラ金の対応にも問題があります。

この問題は、サラ金からの電話によりU社の業務に支障をきたしたとしても、社員Aのみの責任とはいえず、解雇理由にはならないと思います。

さあ、これからU社社長は、どのように対応すべきでしょうか。
現在のところ、社員AはU社に対し、解雇予告手当の支払いと訴訟を準備しているとの内容証明郵便を送付しております。使用者が労働者を解雇するときは少なくとも30日前に告知しなければなりません。即時解雇する場合は、この予告期間に相当する30日以上の平均賃金を支払う必要(これを解雇予告手当といいます・労働基準法20条)があります。懲戒解雇の場合は、解雇予告手当の支給は必要ありませんが、社員Aの解雇にはそのような理由はありませんので、U社は社員Aに対して解雇予告手当を支払う必要がありますし、退職金支給の規定があれば、その規定に基づいた退職金も支払う必要があります。

また、社員Aは、解雇の無効を主張して訴訟などを提起することもできます。解雇には正当かつ相当な理由が必要であるという法理が確立されており、社員Aがこのような裁判を提起した場合には、U社は敗訴する可能性が高いと思われます。

U社が敗訴してしまうと、それまでの賃金を支払わなければならないリスクがありますので、このようなリスクも考えた対応が必要となります。
具体的には、社員Aが退職に同意するのであれば依願退職の形をとり、そうでなく解雇の無効を主張するのであれば、解雇の意思表示の撤回をせざるを得ないと思います。
今後の対応は社会保険労務士とよく相談してください。

社会保険労務士からのアドバイス(執筆:田上 聡子)

「解雇」とは、有効に存続してきた雇用契約(労働契約)を、使用者(会社)の一方的な意思表示により解約することをいいます。
一般的には、次のように普通解雇と懲戒解雇に大別されています。

1普通解雇・・・ やむを得ない事情により、雇用関係を継続し得ないことを理由とするもの
(狭義の意味で、能力不足、勤務態度不良、適格性の欠如、非違行為等、主に労働者側の事情によるもの)
2懲戒解雇・・・ 重大な企業秩序違反を理由とする制裁罰
(懲戒処分のうち最も重い処分)

 

弁護士から説明があったと思いますが、労働者を解雇する場合には、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払が必要です。

労働基準法第20条は、突然の解雇により労働者の生活の破綻を避けるために、「使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、原則として少なくとも30日前に予告をするか、あるいは30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と定め、「但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においてはこの限りでない」、としています。

ここでいう「労働者の責に帰すべき事由」とは、「労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定に当たっては労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、『労働者の責に帰すべき事由』が労基法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従ってまた使用者してかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである」(昭23.11.11/基収第1483号)としています。

 

認定すべき具体的事例としては、
(1) 盗取・横領・傷害等の刑法犯に該当する行為があった場合
(2) 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の社員に悪影響を及ぼす場合
(3) 重大な経歴詐称をした場合
(4) 会社に無断で二重就職した場合
(5) 正当な理由なく2週間以上無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
(6) 勤怠不良で数回に渡り注意を受けても改善されない場合、等が挙げられます。

 

なお、解雇予告又は解雇予告手当を支払わない即時解雇は無効となり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられますので注意してください。

ここで平成16年1月1日から施行される改正労基法第18条の2をご説明しましょう。
今回の改正で、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と明文化されました。これは、今までの判例等実務の扱いを踏襲したものです。
この客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる解雇の正当理由としては、次の事項が挙げられます。

 

(1) 労働能力が著しく劣悪で業務に耐えられないとき
(2) 心身の故障等により正常に業務が遂行できないとき
(3) 長期に病気等で欠勤し、又は病気等による欠勤を繰り返し、正常かつ安定的な業務の遂行ができないとき
(4) 業務に非協力的で、協調性がなく従業員として不適格であるとき
(5) 勤務成績、勤務態度不良で従業員として不適格なとき
(6) やむを得ない事由により事業の閉鎖又は縮小をするとき、並びに経済事情の都合により人員整理の必要があるとき
(7) 信頼関係の破壊等、本人を雇用しがたいやむを得ない事由のあるとき
(8) その他前各号に準じる事由があるとき

 

また、改正労基法第89条3号は、「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」を就業規則の絶対的必要記載事項とし、解雇に関する事由について就業規則に定めるよう規定しています。つまり、使用者(会社)は、民法上解雇権を有しているものの、どのような事由において解雇するのかを明確にしなければならないのです。
注意しなければならないのは、就業規則に具体的な解雇事由を定めた上で、当該就業規則の解雇事由に該当している場合であっても、常に解雇が有効となるわけではなく、解雇権の濫用となる可能性もあるということです。解雇事由が些細なことであったり、労働者側にも斟酌すべき事情があったり、あるいは注意・指導等をして改善のチャンスを与えるなどせず、いきなり解雇した場合には、解雇権の行使は相当性を欠き、権利濫用として「無効」とされることもあります。

今回のような金銭トラブルを起こす、勤務態度が悪い、私生活・思想に問題がある等、これらの問題社員を解雇する場合は、まず、その行為が就業規則のどの条文に該当するのかを検討する必要があります。
次に、その行為をもって解雇することが「客観的に合理的で、社会通念上相当であるか」を判断するわけですが、社員Aの場合、前出の???のどれに該当するでしょうか。
各ケースについて見ていくことにします。

 

 

社員Aの金銭トラブル

社員の財産関係(私生活)と労務の提供とは別次元の問題と捉えるべきです。とはいえ、サラ金の取立てが連日のように会社にまで来たり、督促の電話が会社にかかってきて、その結果職場の秩序が乱され、他の社員の職務に支障が生じるような状況になった場合には、譴責等の懲戒処分や、場合によっては十分な労務の提供がないということで、退職勧奨もしくは解雇することを検討することになります。

社員Aの場合、サラ金に多重債務を抱えており、督促の電話が会社にかかってはくるが、会社に直接の損害を与えていない限り、正当な解雇理由とはなりにくいと考えられます。
社員Aの不信義な行為
社員の“質”をモットーに、手厚い福利厚生を実施し、心優しい社長が「社員に出来るだけのことをしてやろう」という気持ちから創設した生活資金融資制度を悪用された腹立たしさは察して余りあります。

このような不正手段、虚偽の申請等信義誠実の原則に反する不信義な行為が「信頼関係の破壊等、本人を雇用しがたいやむを得ない事由」に該当するのか。その行為をもって解雇することが「客観的に合理的で、社会通念上相当である」と認められるのかが問題です。
解雇の正当理由としては、その行為により業務の円滑な遂行に支障が生じ、他の社員の士気に悪影響を及ぼし、あるいは企業秩序を乱す状態となっていることが必要と考えられます。
社員Aの場合、融資制度を悪用はしたが返済はきちんとしており、使用者(会社)に実害がないということ、融資制度を悪用したという不信義な行為に関し、注意・指導をして反省を促す機会を与えるなどせずいきなり解雇したということから、これまた正当な解雇理由とはなりにくいと考えられます。

なお、一つ一つの事由は些細なものであっても恒常的に繰り返され、使用者(会社)の再三の注意指導にもかかわらず一向に改善しない、業務遂行上問題が生じるような場合には、解雇事由となり得ます。

 

 

社員Aへの対応

今回のように労基法第20条に違反して、解雇予告も解雇予告手当もなしに即時解雇を行った場合、その効力はどうなるのでしょうか?
「使用者が即時解雇に固執しているものと認められない場合には、解雇予告後30日を経過するか、適法な予告手当の支払をしたときは解雇の効力が発生する」(小松新聞舗事件/東京地判/平4.1.21)としています。

社員Aに対し解雇予告手当を支払えば、この解雇の効力は発生することになります。
しかし、今回の事例における解雇が訴訟となった場合は、これまでに説明したように、客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる正当理由に当たるか否か、解雇が有効か無効か、裁判所の判断を待つことになります。
現在の状況では、U社が圧倒的に不利ですので、社員Aに対して一旦解雇を撤回し、その同意を求めることがよろしいでしょう。

 

今後の人事労務管理

会社に損害を与えるような社員の不始末があった場合、使用者によって課せられる一種の制裁罰に懲戒処分(譴責・減給・出勤停止・懲戒解雇等)があります。
前出労基法第89条は、労働者が守るべき事由も示されないで突然懲戒処分を受けることを防止し、労働者を保護するため、制裁(懲戒)の定めをする場合においても、その種類および程度を就業規則に記載するよう義務付けています。
使用者(会社)としては、この融資制度の利用について、不正な手段、虚偽の申請等信義誠実の原則に反する不信義な行為、信頼関係の破壊等行為があった場合は懲戒処分(最小限度の範囲にとどめるべき)する旨明文化し、違反者に対しては公平・公正に処分を行うべきです。
その上で、就業規則に定められている客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる解雇事由に照らし、この条項の適用に当たっては、恣意的にならないよう注意し、労基法に基づき合法的に解雇手続きを進めることが肝要です。

税理士からのアドバイス(執筆:後藤 みどり)

使用人に対する福利厚生の一環としての厚生融資、結婚融資等の融資制度や、災害、疾病等の場合における緊急融資制度、使用人の住宅取得を援助するための住宅融資制度等は、多くの企業において広く一般に行われているところです。

生活資金融資制度自体は、税制上なにも問題はありませんが、このような融資制度によって、使用人が使用者から無利息又は低金利で金銭の貸付を受けた場合には、通常取得すべき利息の額と、実際に徴収した利息の額との差額に相当する金額の経済的利益を受けたことになり、原則として、その貸付を受けた人に対する給与として課税されることになります。

しかし、この利子相当額の経済的利益については、他の一般の現物給与とは異なった取扱いがなされており、前述の緊急融資や、住宅融資の場合には、その融資の理由に照らし、または住宅取得についての国の政策の一環として、所得税を課税しないこととされる場合もあります。(貸付金に対する利息の評価については、貸付の目的等により取扱いが異なりますので注意が必要です。)

会社は、まず貸付の目的にあわせた合理的な利率や返済期間等を定めた融資規程を作成し、それに従って処理をするようにします。また、利息について経済的利益が発生する場合には、源泉徴収をする必要があります。(経済的利益の額が、使用者における平均調達金利等により生ずるもの、または、年額5,000円以下の場合には課税対象となりません。)

会社の経理処理については、通常の利率により計算した利息の額を収益計上する必要がありますが、実際に利息を取得していない経済的利益の部分については、給与(又は福利厚生費)/受取利息(又は雑収入)という仕訳になり、損益に影響を及ぼさないことから、必ずしも計上する必要はないと思います。

ファイナンシャルプランナーからのアドバイス(執筆:奥村 栄治)

U社社長が苦労された若かりし頃は、右肩上がりの高度成長の時代であり、電化製品や自動車など大型消費財購入のため、年々お給料が上がっても、一時的にまとまったお金が欲しい時があったのだと思います。そのようなご経験から、本件の原因となった生活資金融資制度を社員福利厚生の一環として導入されたのでしょう。
一方、福利厚生とは優秀な社員を会社に留める、ひとつの手段として考えている社長さんも多いのではないでしょうか?
しかし、今日的には会社の立場と社員の立場では、福利厚生に対する考え方が違ってきています。そこで今の社員達にとって、“本当の福利厚生とは何か”をもう一度考えてみたいと思います。

最近では、会社選びの際、箱型の福利厚生の充実より、給料の多寡を優先して考える社員が増え、福利厚生によって会社への忠誠心やモチベーション向上を図ることは難しくなってきました。
かつての高度成長時代であれば、終身雇用制のもと、会社への帰属意識も高く、福利厚生の善し悪しが会社選びの重要事項のひとつでした。しかし、最近の傾向としては、終身雇用が形骸化し、社員の価値観が多様化し、企業への帰属意識が低下した結果、転職はあたりまえとなりました。
このような状況では、福利厚生は恩恵的なものではなく、社員の権利意識を充足するような制度とする必要があります。言わば、「自分が都合よく利用できればよい」と社員が考えることは、特異なことではなくなっているのです。

一方、会社としては、若い優秀な社員には長く働いてほしいが、仕事上伸び悩んでいる中高年の社員はできれば、早くやめてほしい、という考えが沸々と湧いてきます。
そして会社は、社員の自立や自己責任を要求してきます。その時、社員は何ができるでしょうか?ただ放っておいても自立した社員は育ちません。
中高年になったときに、会社にぶら下がっている人間ではなく、自立した社員になってもらうために、ライフプラン作りの講習やマネー教育を福利厚生の一環として導入することで、福利厚生が活きた制度になるかもしれません。

社長が若いときお金で苦労した経験から考えた、社内融資制度を社員のライフプラン実現に役立てるものと位置付けてはいかがでしょうか?
お金を借りるとはどういうことか、金利とはなにか、消費者金融利用の注意点は何か等々、U社にはマネー教育が必要だと思います。
本件は「ちゃんと返済すれば文句はないでしょう」と安易に制度を利用して、お金を浪費した社員が出てしまいましたが、社員が自立するためのライフプラン作りとマネー教育を実施していれば、今回の事件は防げたかもしれません。

社員に裏切られたと考えるのではなく、制度の利用方法に誤りがあったため悪用を助長したと考え、ライフプランとの係りのなかでの運用方法の見直しやマネー教育を行って、福利厚生が社員の自立のために大いに役立つ制度になるように活用されることをお勧めいたします。

社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
SRネットは、全国展開に向けて活動中です。


SRアップ21熊本 会長 上田 吉勝  /  本文執筆者 弁護士 高野 正晴、社会保険労務士 田上 聡子、税理士 後藤 みどり、FP 奥村 栄治



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