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第2回  (平成14年4月号)

営業所閉鎖を理由に社員解雇を巡ってのトラブル対応

SRアップ21東京(会長:久禮 和彦)

相談内容

5年前から昇給がストップし、賞与の支給もありません。社員の勤務状況に変わりはなく,運賃の値下げと諸経費の増大が会社経営を圧迫しているようです。
長引く不況の影響で、Y社もさまざまなリストラ対策を講じようとしますが、社長が優柔不断のこともあり、ことごとく社員の協力を得られません。
Y社は次第に追い込まれ、最後の手段として中野営業所を閉鎖し、所属する社員7名全員を解雇しました。中野営業所の社員は、本社や大田営業所への異動を希望していましたが、社長はこれ以上社員の意見を聞いていると何もできないと、要求を突っぱねました。
中野営業所の一部の社員が不当解雇ではないかと騒ぎだすと、他の6人も同調し、残業手当の不払い、雇用保険資格取得日がずれていたことなどの問題が噴出し、訴訟問題に発展してしまいました。

相談事業所 Y社の概要

創業
昭和39年

社員数
本支店合計51名(正社員31名、パート・アルバイト20名)

業種
貨物運送業および引越業  

経営者像

53歳、2代目社長(情けに弱いところあり)


トラブル発生の背景

Y社の社長は2年前から父親の後を受け、社長業を引き継ぎました。先代社長の時代には専務でしたが、どちらかというと経営や労務管理よりも社員といっしょになって、運送業務に携わっていたほうでした。
その結果、部下を管理する能力が低下し、社員からも優柔不断なタイプと見られていたようです。
会社を牽引するリーダーが優柔不断というのは、経営者としての重要な資質が不足していることになります。早い決断は失敗しても修復可能ですが、遅い決断は致命傷になることが多いからです。中小企業には多いケースですが、Y社のように単なる2代目だからという理由だけで事業を継承してしまうと、思いもよらないトラブルが次から次へと発生してしまいます。
親子で事業を継承する場合は、経営者としての資質の見極め、必要なブレインの配置、経営経験は十分に積んだかどうか、社内の人望は熟成されたかどうかなど、十分に考慮する必要があります。安易な継承は禁物であり、経営上の危険を伴います。

さて、今回の事件発生の原因は次の3点でした。

1. 運賃値下げや諸経費増大が会社経営を圧迫していることを楯として、社員も苦しみを味わうのが当然だと思っていたこと
2. 専門家の提案を真剣に受け止めず、当面の打開策ばかり模索していたこと
3. 就業規則を始め、労働関係諸法令の理解が不十分であったこと

「社員の意見を聞いていると何もできない」からと社員の要求を突っぱねるのは、何もしないから社員の意見を聞くタイミングを失ったのではないかと思えます。
先を読むことは難しいことですが、現状の把握ができていれば問題は顕在化し、ある程度先が見通せるものです。
数十名の会社であれば、日頃のコミュニケーションにより現状把握は可能なはずです。 コミュニケーション不足によって社員の日常的な不満が芽生えることだけは、避けたいものです。

経営者の反応

「今のところは何もないのだから、よけいなことをしないほうが良い」というのが、社長の考えでした。
これまでにも、残業単価の問題、残業時間誤計算の指摘、交通事故が多い社員の解雇、お気に入りの社員にだけ家族手当を支給するなど、数多くの問題がありましたが、すべてその場しのぎの処置のみ行い、仕事に追われる振りをしていました。
しかし、中野営業所の閉鎖と所属社員の解雇を発表してからは、社員からの猛烈な反撃を受け、やっと社長も大問題だと気づいたようです。それからは、社会保険労務士、弁護士、税理士に相談しながら理論武装、情報を整理していましたが、社員と対峙するとつい感情論に流されることが多く、社長一人では話がなかなか進まない状況でした。
やがて、問題解決が法廷の場へと移され、解決まで2年を要する結果となってしまいました。
現在は、この問題を契機として、2度と同じ問題を起こさないために、FPからの提案も採用しながら、会社の再出発に賭けています。
やっと、社員のための人事労務管理対策が重要であるとの認識が、社長に根付いたようです。

  • 弁護士からのアドバイス
  • 社労士からのアドバイス
  • 税理士からのアドバイス
  • ファイナンシャルプランナーからのアドバイス

弁護士からのアドバイス(執筆:松崎 龍一)

事例解決の手順・進め方のポイント
担当の社会保険労務士から連絡を受けて、Y社社長と面談しました。 今回の中野営業所閉鎖と所属する社員全員の解雇について、民事上の注意点を説明しました。すでに解雇の張り紙をしていましたので、会社の正当性を補強することになるのかどうか、という点で話を聞いてもらいました。
整理解雇とは、経営不振等のために従業員数を削減する必要性に迫られたという理由で行われる解雇のことです。
解雇は自由にできるというわけではありません。法令上解雇が禁止されている場合があります。たとえば、業務上の傷病による休業期間中は解雇できません。
また、これが一番問題なのですが、法令上解雇が禁止されている場合でなくても、解雇権の濫用になるときは、その解雇は無効となります。
整理解雇については、これに特有の法規制はありません。しかし、整理解雇が有効とされる要件については、裁判例の蓄積により、一定の法的基準がほぼ確立されています。

整理解雇が合理性のある有効なものとされるためには、

(1) 人員削減の必要性が存在すること
(2) 解雇を回避するための努力義務がつくされていること
(3) 解雇される者の選定基準が合理的であること
?(4) 解雇手続が妥当であること

以上の4要件を充足する必要があります。

 

(1) 人員削減の必要性が存在すること
これは、人員削減措置が企業経営上の十分な必要性に基づいていること、ないしはやむをえない措置と認められることです。
この要件については、人員削減をしなければ倒産必至という状況にまで至っていなければならないというわけではありません。合理的経営者であれば整理解雇を実施することも十分に考えうるという程度の経営状態の悪化があればこの要件を充足します。
人員削減の必要性の有無は、人件費の動向、新規採用・臨時工などの人員動向、業務量、営業状態、株式配当、資産状況などを考慮して決めます。
たとえば、整理解雇の後に、定期昇給・ベースアップ・一時金支給があり、応援労働者を受け入れ、残業の増加もあった事案で、整理解雇の必要性を否定した裁判例があります(平野金属事件大阪地裁決定昭和51年7月20日)。

 

(2) 解雇を回避するための努力義務がつくされていること
整理解雇は最後の手段です。整理解雇を行う前に使用者は残業の削減、配転、出向、新規採用中止、パートタイマーや期間雇用労働者の削減、一時帰休、希望退職募集などの措置を検討しなければなりません。(あさひ保育園事件最一小判昭和58年10月27日)
たとえば、希望退職募集をした後、その応募者に対して使用者が慰留している場合は、解雇回避努力義務を尽くしていないことになります。(細川製作所事件大阪地裁堺支部判決昭和54年4月25日)

 

(3) 解雇される者の選定基準が合理的であること
整理解雇は、労働者に責任があることによる解雇ではないので、解雇対象者の選定は、客観的に合理的な選定基準で行われる必要があります。
選定基準には、勤務成績や能力等の労働力評価、勤続年数等の企業貢献度、労働者の再就職可能性や家計への打撃等の労働者の生活評価、労働者の雇用形態などがあります。これらの基準が客観的に合理的か否かは、個別の事案ごとに判断します。
たとえば、アルバイトなど非正規労働者を優先的に解雇する基準の合理性については、単純に呼称だけを基準にすることは合理的ではありません。業務の内容、採用時のやりとり、労働契約更新の回数、契約更新手続が形骸化していないかなどを全体的に見て、実質的に判断する必要があります。

 

(4) 解雇手続が妥当であること
使用者は、労働者に対し整理解雇に至った経緯及びその時期・方法等について十分な説明を行い、労働者から意見を聴取しなければなりません。そうしないで一方的に解雇通告を行うことは解雇権の濫用となります。
この義務は、人事協議約款が存在する場合はもちろん人事協議約款が存在しない場合も課されます。

 

以上を基本事項として説明し、実際の経緯を聞き取りました。社長から話を聞いた時点で裁判になることが確信できましたので、以下の事項を社長に調べるように依頼しました。

 

・ 中野営業所の収支
・ 中野営業所社員の勤怠状況、懲罰の有無
・ 会社が実行しようとしたリストラ対策の要旨と、そのときの社員の反応

 

その後、中野営業所の社員は、管轄裁判所に本事件を提訴し、法廷闘争となりました。
その過程で、さまざまな調書の下書を社長にさせましたので、かなり社長も参ったようです。「二度と同じ問題が起きないように…」社長にしっかりと根付いたようです。  
裁判の結果は、会社の正当性がある程度認められ、最終的に示談となりました。  
2年の間にY社の業績が徐々に上向いてきましたので、7名のうち3名の社員を再雇用することにしました。残りの4名は、3ヶ月分の賃金を退職金代わりに支払うことで、合意しました。

社会保険労務士からのアドバイス(執筆:久禮 和彦)

事例解決の手順・進め方のポイント
「現在の有利子負債と今後の経営を考えた場合に、大きなリストラ対策を実行しなければならない。」銀行から帰ってきた社長が発した言葉が、今回の事件の引き金でした。
そして、税理士と相談を重ねた結果が、中野営業所の閉鎖と人員の整理となったのです。税理士は、「人員の整理については、社会保険労務士に十分に相談したうえで実行するように」と何回も念押ししましたが、社長は、その日のうちに中野営業所に出向き、営業所の閉鎖と所属社員の同日付解雇の張り紙をしてきました。税理士から電話をもらって、すぐに連絡したのですが、時既に遅し。

一昔前は使用者と雇用者という主と従の関係がありました。企業内での平均年齢が上昇して経験の累積が増えると、人の「個」を尊重することが経営上大きな力となっていた時代です。当時は、上司の言うことや会社の施策は絶対であり、それに対して社員が反発することなどあまりありませんでした。
この2代目社長は、先代社長の強硬路線の都合の良い部分だけ継承しているようです。

社員に説明することもなく、一枚の張り紙だけでことを済まそうとしたのですから、社員が反発するのはもっともなことです。
完全に事後処理となりましたが、やむを得ません。何とか社長を助けるしかありません。解雇は撤回しない方向で話を進めることになり、次のような手順で処理を進めました。
整理解雇に対する説明と処置については、弁護士と連携を図りながら業務を進めました。経緯は、弁護士が担当します。

まず、本社ならびに大田営業所への配置転換が無理なこと、再就職を斡旋したいが、これも知り合いの運送会社には引き受け手がないことを話しながら、社員からの相談を受けることを社長に説明しました。
労働基準法に定める予告期間は30日以上確保していましたので、労働基準法上の問題はありません。

 

労働基準法第20条では、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、労働者が突然の解雇からこうむる生活の困窮を緩和するため、少なくとも30日前にその予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払うことを、義務づけています。

 

 

また、今回問題になった残業手当の不払いについては、事実関係を確認して支払うことを約束させました。
雇用保険の資格取得日については、遡及手続時効が2年であることから、社員が申し立てる本来の入社日に訂正することは不可能です。15年以上前に入社した社員たちの話ですので、会社にも当時の資料が残っていません。なぜ、資格取得日がずれたのかという理由も、当時の事務担当者が退職しているため推測するしかありませんでした。
この件については、本人たちが失業手当を受給する場合に、不足する日数分を会社が負担することで何とか合意に持ち込むように説明しました。
一通りの説明を終え、社長に「大丈夫か?」と確認すると、どうも顔色が良くありません。これまでの経緯を察すると、《社長の信頼》が地に落ちた感があります。よって、法的な説明と事務処理については、社長のサポートを行うという条件で、説明会に立ち会うことにしました。

1週間後の夕方に横浜営業所の社員を集めて説明会を行いました。

 

運送業の現情を察するに、雇用を維持しつつ「残業時間の短縮」「業務の効率化」を行うことは、かなりの難題であり、社員が相当の協力と努力をしなければどんな企業でも成果を産み出すことは困難であること。
会社は「雇用維持」のため、新たな賃金システムの構築と社会保険の適正加入を含めて検討を重ねていたが、「苦しいときにはお互いに我慢して、皆で会社をよくしよう」というコンセプトが社員に理解されなかったこと。
仮に、中野営業所全社員を大田営業所に配転し、そこで一定の客観的基準に基づき解雇対象者を選定することは、かえって合理性を欠くこととなり、このタイムラグが会社の維持・存続に危機的状況をもたらすと考えられること。
不足分残業手当の支払に関すること
雇用保険失業給付の受給方法と社員からの質疑応答

 

 

社員たちは、これまでの人事・労務管理上の不満を口にしながらも、当面の補償問題には納得したようです。 しかし、「解雇」については、やはり納得いかないということで、弁護士に相談するとのことでした。

その後の中野営業所社員の訴訟問題は弁護士が担当し、私は社内諸制度の再構築に着手しました。これまでペンディングとなっていた就業規則、賃金規定を完成させ、運用できるようにするために、社長と役員の教育も兼ねながら、かなりの時間をY社に費やしました。その甲斐あって、賃金規定の大幅な見直しが実行でき、月間支払賃金が10%も圧縮できました。
また、日常の労務管理を徹底するために、配車担当を課長職とし、かなりの権限を委譲するようにしました。最初はギクシャクしていましたが、徐々に課長職が板についてきて、最近では社員のよい相談役となっています。

現在では、ドライバーに対する営業奨励金制度、無事故報奨金制度、人材紹介制度を導入し、社員のモチベーションアップが期待できるような対策を次々と打ち出し、検討を重ねながら、運用レベルに落とし込んでいるところです。

税理士からのアドバイス(執筆:浅田 徳英)

事例解決の手順・進め方のポイント
Y社の場合、これまで何度か社員の前で、そのときの経営状態を説明しました。社長が話すよりも説得力がある、ということでしたが、疑問を感じていました。どうも社長が現状を把握していなかったことと、面倒なことは避ける性格からきているようです。
しかし、経営的な課題として、有利子負債の解消が急務であることは事実ですので、社長と共に社員に協力をお願いするはめになってしまいました。
特に、「営業業務への従事」また雇用維持のための「賃金調整」については、社員の意見を聞くためにも何度か交渉をもちましたが、結果として、「営業業務への従事」は無視、「賃金調整」については話し合いにもならず、一方的に拒否という状態でした。

中野営業所は、ここ2?3年得意先が減少していました。会社全体で考えても業績が低迷していることは明らかであり、人件費そのものがますます経営を圧迫している状態です。
また、会社の現状を考えるに中野営業所の維持・管理費用の消滅はもとより、立地する不動産の処理如何では経営を立て直すことも可能であると考えるようになりました。そこへ、銀行からのリストラ依頼です。準備さえ万全に整えれば、Y社の復活につながります。社長にもこのような話をして、社会保険労務士、弁護士と連携して事を進めるように指導しました。しかし、社長が1日も早く、とあせってしまったことが、今回の事件を引き起こしてしまったのです。

裁判が進むなかでは、経営情報の取りまとめ、資料の作成等を行いましたが、少しでもY社の整理解雇が妥当であることを祈るしかありませんでした。

【参考】社員退職時の税務処理
会社は退職所得の源泉徴収事務を行い、税務調査の際、説明が出来るようにしておく必要があります。 源泉徴収する税金は所得税と住民税です。

まず退職をする者から「退職所得の受給に関する申告書」に住所、氏名、勤続期間、他に退職金を受けたことがあるかどうかの事項を記載させます。
もしこの申告書がないときは、会社は一律に退職金の20%相当額を源泉徴収して納付しなければなりませんので、必ず作成して会社で保管します。(税務署には提出しない)
仮に退職者が意図的に申告書の記載をしないときは、退職金支払時に20%を源泉徴収することになります。
次に退職金についての源泉徴収税額を計算して、通常の給与と同じ様に差し引いて退職者に支払うことになります。

 

? 退職金の源泉徴収税額の計算 ( 所得税 )
退職金の源泉徴収税額は、次の算式で計算した所得金額をもとにして計算します。
なお、解雇の場合労働基準法の規定による予告手当は退職金にあたります。
( 退職金の総額 ― 退職所得控除額 ) × 1/2 =課税退職所得金額退職所得控除額は次の表で計算します。
勤続年数 退職所得控除額
2年以下
2年超20年以下
20年超
80万円
40万円×勤続年数
70万円×勤続年数―600万円
こうして計算した課税退職所得金額をもとにして下記の算式で当てはめて源泉徴収税額は計算されます。
課税退職所得金A 税率B 控除額C 税額=A×B―C
330万円以下 10% A×10%
330万円超900万円以下 20% 33万円 A×20%―33万円
900万円超 1,800万円以下 30% 123万円 A×30%―123万円
1,800万円超 37% 249万円 A×37%―249万円

 

源泉徴収票の作成と交付
退職金を支払った時に退職者に源泉徴収票を作成して交付する。

 

住民税の徴収
概要で述べた様に住民税も退職金支払時に源泉徴収をします。
住民税は基本的には所得税と同じ計算をして課税退職所得金額を計算します。そして住民税を計算します。
なお住民税の場合は、会社のある区役所、市町村役場の税務課が交付する住民税特別徴収税額表に従って計算します。住民税については、都道府県、区市町村ごとにより税率が異なることがありますので、注意して下さい。

 

退職所得の受給に関する申告書を記載しなかった者の住民税の源泉税額
先に述べた通り、申告書の記載をしない者については所得税では20%を源泉徴収することは必要ですが、住民税については記載をした者と同様の計算をして源泉徴収税額を算出してください。

 

退職者の年末調整について
基本的には退職者の年末調整はしません。
退職者は会社が作成した源泉徴収票を基に、自分で所得税の確定申告をします。
所得税の基本通達によると12月中に支給期間が到来する給与の支給を受けた者は、年末調整の対象になります。
会社が本人に解雇予告をしている場合は、年内に就職活動や、場合によっては今後の生活のために副業をしている可能性があること、さらに年末調整の事務の不備があった場合、退職後では連絡がとれないことが充分考えられますので退職者の年末調整は、上記の場合も含めてされない方が、実務的には安全ではないかと思われます。

 

[ 条文 ]
1. 所得税の源泉徴収
  所得税法第30条第1項、第2項、第3項、第4項                                    第190条
   所得税基本通達第190―1

2. 住民税の源泉徴収
  地方税法第45条の2
         第321条の3第2項
         第321条の5第2項但書

ファイナンシャルプランナーからのアドバイス(執筆:新村 博子)

今後のリスク管理について
本事例のY社は、社員を解雇したことによるトラブルでしたが、この問題を解決していくなかで、自分にもしものことがあった場合、会社の将来はどうなるのだろうか、と社長が心配になってきたことから、今後のリスク管理として会社の保険を見直すことになりました。
まず、大きな保険料負担を強いられている自動車保険に手をつけました。 一般的に、自動車保険を選択する場合は、「保険料」を中心に考えるか、提供される「サービス」を中心に考えるか、のいずれかとなります。
「保険料の安さ」を選択する場合は、トラック協会の共済保険が民間の保険より2?3割低額となっています。

なお、交通事故の示談交渉・安全教育等のサービス部分は、民間保険会社の方が優れています。
たとえ示談交渉や安全教育についてのサービスが不足していても、まずは経費削減です。安全教育については、毎月定例的に”ひやり、はっ”とした体験を社員同士で報告しあうことにしました。安全教育のレベルアップはこれからです。
自動車保険には対人賠償保険・自損事故保険・対物賠償保険・車両保険・搭乗者傷害保険等がありますが、Y社は数社の民間保険会社と保険契約を締結していましたので これも1本化し、総合保険にすることによっても保険料を減額できました。
なお保険金額については、免責部分等について再度見直すことにしました。保険料の減額には、無事故割引が大きなポイントになります。

 

業界の労働災害発生状況
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(注)
1. 「死傷災害」(休業4日以上)は 労災保険給付データ及び労働者死傷病報告 (労災非適)から作成
2. 厚生労働省「労働災害発生状況」(速報)から 業種、事故の型別災害発生状況 平成13年(1?10月)

 

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資料 厚生労働省

 

 

陸上貨物運送業の労働災害は平成9年度以降減少傾向にありましたが、12年度以降増加傾向を示し、その中でも交通事故は増え続けています。
「事故をおこさない」これは「企業の社会的責任」「顧客の信頼」「被害者の立場」「社員やその家族の幸せ」等と共に保険料減額のためにも真剣に取り組むべき課題です。
「事故をおこさない」ためには「安全教育」が必要不可欠です。
Y社社長も「安全教育」が出来る社内体制を整備することの重要性は十分認識していますので、私の方も社会保険労務士と協力しながら、適性検査や安全教育の提供をしていきます。

さて、国内法人の99%が中小企業ですが 財務体質の改善・新規分野等の開拓・社内体制の整備等を経営者自らが計画的に行うことが急務と言われております。重責を担う社長に不意なアクシデントが訪れる場合も考慮しておく必要があると考え、相続税対策・遺産相続資金の確保・自社株の分散を防ぐ等が出来る経営者保険への加入を検討するよう提案いたしました。

なお保険の見直しについては その他引越保険・火災保険・利益保険また社員に対する労災保険の上乗せ保険等の見直しにも着手しています。
自己責任が強調される中で、各種保険について続々と新種(型)保険が開発されている一方で、経営が破綻する保険会社もでてきています。FPの使命は、顧客に対し、常に最新の情報を提供できることだと思っています。

社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
SRネットは、全国展開に向けて活動中です。


SRアップ21東京 会長 久禮 和彦  /  本文執筆者 弁護士 松崎 龍一、社会保険労務士 久禮 和彦、税理士 浅田 徳英、FP 新村 博子



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