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第102回 (平成22年7月号)

「会社を辞めるなんて言っていません!」
1ヶ月以上も無断欠勤していたのに…??

SRネット東京(会長:藤見 義彦)

相談内容

「Y社員が来なくなってからもう2週間ですが、そろそろ進退をはっきりしなければなりませんね」E社の幹部会議で、総務部長が発言すると、「すでに働く意思がないということだろう、営業成績も悪いし、借金もあるそうじゃないか…」C社長が応えました。
中途入社のY社員は勤続2年目の31歳、前職も営業社員でしたが、過去1?2年で転職を繰り返していました。

「懲戒解雇は面倒ですし、無断欠勤の理由も分かりませんので、2週間以内に連絡がない場合は退職処理する旨の通知を送って、それで処理しましょう」と総務部長。
「母親に連絡を取ったのですが、またですか、という感じであきれていましたよ、会社の好きなようにしてください、といっていましたので、それでよろしいのではないでしょうか」営業部長が続きました。
「そうだな、じゃあうまくやってくれよ、後であれこれ言われるのは嫌だからな」とC社長が締めくくりました。

それから、1ヶ月程経った日、いきなりY社員が出社してきました。「サラ金業者がしつこいので、しばらく知り合いの家に身を隠していました。会社に電話すると居場所が知られると思い、連絡できなかったのです…」

C社長ら幹部は、なんだこいつ!と思いながらも、よくよく話を聞くと、たまたまやった競馬で大当たりし、その借金が全額返済できたので、一からやり直したい、ということでした。
「そんな自分勝手なこと言われても困るな…、君も社会人なのだから、1ヶ月以上も無断欠勤しておいて“また仕事します”は、ないだろう、君の退職手続は完了しているのだ!早く帰りたまえ!」
あまりのずうずうしさに、C社長は声を荒げてしまいました。「しかし、私は退職するとは言っていませんし、懲戒処分も受けていません…、でしたら勝手に会社が解雇したということではないのでしょうか?」

相談事業所 E社の概要

創業
昭和62年

社員数
22名 パートタイマー 5名

業種
加工食品卸売業

経営者像

E社のC社長は二代目社長で63歳、小規模ながらも、総務・営業両部長(使用人兼務役員)と共に会社を成長させています。父親譲りの道徳観と性善説にたった労務管理をモットーとする日本的な正統派社長です。


トラブル発生の背景

E社が行ったY社員の退職処理が甘かったのでしょうか、それともY社員が屁理屈をいっているのでしょうか。無断欠勤をしばらく放置するような企業が多くなっていますが、これが一番の問題のようです。
最近では、うつ病の発症で無断欠勤するような事例も多くなっていますので、無断欠勤に対する効果的かつ法律上有効な措置を学ぶ必要があるでしょう。

経営者の反応

Y社員の異常なほど冷静な態度に驚きながらも「Y社員の言い分が通用するなら、自分勝手にいくら休んでも、会社は雇い続けなければならないことになる、そんなバカな話があるか!話にならん」C社長は今にも頭から湯気が出そうな雰囲気です。
一方、総務部長は、帰り際に言われた「少なくとも解雇予告手当と有給休暇の未消化分は請求しますよ、それから私の私物を無断で処分されましたから損害賠償もありますね、改めて連絡しますのでよろしくお願いします」というY社員の言葉を思い出していました。

「とんでもないヤツだ、塩でもまいておくか」と幹部たちが苦笑いしているところへ、総務の女性社員が一枚の紙をもってきました。それは、Y社員の有給休暇振替申請書でした。
「社長、先手を打つためにも、どこかへ相談しておきましょうか」という総務部長に「そうだな、Yのような人間は、懲らしめておかないとならない」とC社長が同意しました。

  • 弁護士からのアドバイス
  • 社労士からのアドバイス
  • 税理士からのアドバイス

弁護士からのアドバイス(執筆:市川 和明)

退職処理の法的効力について
E社は1ヶ月以上無断欠勤したY社員を退職処理していますが、その後会社に現れたY社員は、この退職処理の効果について争ってきました。この退職処理は法的に有効なのでしょうか。
長期間行方不明の従業員に対してどのように退職処理すべきかが問題です。

この点、「労働者の責に帰すべき事由」(労基法20条1項但書)に関する行政解釈の事例(5)(基発1637号・昭和23年11月11日、基発111号・昭和33年3月1日)と同様に、2週間以上無断欠勤した従業員については懲戒解雇事由となっている例が多いようです。
しかしながら、懲戒解雇の意思表示はその通知が従業員に到達しなければ法的な効力がないため(民法97条)、公示による意思表示の手続が必要です(同98条)。

本件のE社は、面倒だということで懲戒解雇の手続は取っておらず、2週間以内に連絡がない場合は退職処理する旨の通知を送って、普通解雇の処理をしています。
確かに、Y社員の理由不明の無断欠勤が約2週間に及んでおり、さらに2週間しても連絡してこないような長期間行方不明の従業員は、通常、会社に復帰する意思がないことが多く、退職を覚悟していることが多いため、実務上、このような処理で後日問題が起こることは少ないでしょう。
しかし、法的にみた場合、Y社員は行方不明であるため、解雇の意思表示は到達しておらず、解雇の効力は発生しません。

なお、仮にE社の就業規則に行方不明となり一定期間以上(最低でも30日は必要と思われます)無断欠勤した場合には退職したものとして取り扱う旨の規定(自動退職制度)があれば、Y社員を退職扱いすることも可能でしょう。
また、従業員との関係では法的効力はありませんが、家族から、会社には一切迷惑をかけない旨の念書を取り付けるなどしておくのも、会社へのクレームを抑止する事実上の効果があると思われます。

以上からすると、Y社員の言い分は正しいということになりそうです。
しかし、1ヶ月以上も行方不明となって無断欠勤している以上、懲戒解雇事由には該当すると考えられるので、E社としては、Y社員が会社に現れた時点で、あらためて懲戒解雇手続を取って、懲戒解雇処分とすべきでしょう。

次に、Y社員の言い分は、サラ金業者がしつこいから知り合いの家に身を隠していたが、偶然大当たりして借金を完済できたので、やり直したいというものですが、E社はこのような場合にY社員を受け入れなければならないのでしょうか。
無断欠勤の理由によっては、会社が許容しなければならない場合があるのかどうか、が問題となります。

例えば、事件や事故に巻き込まれたとか、労働災害とまではいかないにしても、業務過多が本人の資質に影響するなどしてうつ病を発症し無断欠勤するといったやむを得ない事情があるような場合には、直ちに退職扱いにしたり解雇することは許されないと解されます。

ところが、Y社員の言い分は、E社とは全く無関係の事情であり、Y社員の個人的理由に基づくもので、弁護士に依頼して債務整理するなどすれば、身を隠す必要もなかったことです。
さらに、借金を抱えながら無断欠勤中に競馬に手を出すなどしており、およそ身勝手な主張であって、これにはやむを得ない事情はないといえます。それ故に、E社はY社員を懲戒解雇することができると考えられます。

解雇予告手当について
Y社員は、解雇予告手当を請求していますが、前述のとおり、E社はY社員を懲戒解雇することができると考えられます。
懲戒解雇=即時解雇ではありませんが、本件では、Y社員は2週間以上正当な理由なく無断欠勤しており、行方不明となって会社による出勤の督促もなしえない状態となっていた以上、E社による懲戒解雇は「労働者の責に帰すべき事由」に基づいてY社員を解雇したものと解されるので(前記行政解釈)、労働基準監督署の認定を受けて即時解雇することができます。
したがって、Y社員を懲戒解雇にして上記認定を受ければ解雇予告手当の支給は不要です。

有給休暇の振替請求について
Y社員は、有給休暇振替申請書を提出して欠勤日を有給休暇に振替えるよう求めていますが、有給休暇の事後請求という概念は成り立たないと解されており(東京地判平成5年3月4日判タ827号130頁)、E社はY社員の欠勤を有給休暇に振り替える法的義務はありません。
なお、従業員が急病等で時季指定できない場合に、会社が裁量で振替えを認めることは構いませんが、差別的取扱いをするなど裁量権の濫用に至れば違法と解されます。本件では振替拒否が裁量権の濫用にあたると解される事情は見当たりません。

私物の無断処分について
E社は、Y社員の私物を無断で処分してしまい、Y社員が損害賠償を請求すると主張しています。1ヶ月も無断欠勤しているような従業員の私物であれば会社は勝手に処分してもいいのではないかと考えてしまいそうですが、私物はあくまでもその従業員のものなので、明確に処分を依頼していない限り、それは認められません。私物と知りつつ勝手に廃棄してしまえば、器物損壊罪(刑法261条)に問われかねません。
家族に連絡がつくのであれば、前述のような念書を取って、家族に私物を引き取ってもらうのが現実的と思われますが、引き取り手がいない場合は、裁判を起こすしかありません。

社会保険労務士からのアドバイス(執筆:朝比奈 広志)

ひとくちに労働契約の終了といっても、会社と社員のどちらの側からの意思表示が働いたかにより、次のように区分けされます。
会社側からの一方的なもしくは強い意思表示によりなされる解雇(これには懲戒解雇、普通解雇及び整理解雇などが含まれます。)と、この逆で社員側が退職届を提出して一方的に解約の意思表示をしてなされる辞職(会社の同意や承認を得てないもので無断退職ともいわれます。)、そしてその中間的なものとして両者の合意により労働契約を終了させるものの3形態です。最後のものにはその意思がどちら側に偏っているか、もしくはどちらの側からの働きかけであったかにより勧奨退職、依願退職などに区別されます。
これとは別に両者の意思とは関係なく就業規則等で定めた事由、すなわち契約期間満了による退職、休職期間満了時に復職できない場合の退職、定年退職など一定の条件が成立したことにより労働契約が終了することもあります。

Y社員の無断欠勤がスタートした時点で、E社は自社の就業規則ではどのような取り扱いをする規定になっているかを検討・整理し、その規定通りに対応することが必要でした。無断欠勤に対しては、なんらかの注意、懲戒を行い、出勤の督促をしても一定期間これが継続した場合には懲戒解雇とする、などと定めている就業規則がほとんどです。

ところがE社では、Y社員に対する処分を規定どおりに行わず、ともかく「進退をはっきりさせたい。」という強い意思があったようです。しかしE社が「はっきりさせたい。」といっても、Y社員の意思が判らないまま会社が一方的に「退職扱い」としたのですから、前述のとおりこれは解雇ということになり、最低30日前の解雇予告もしくは解雇予告手当の支払いが必要となります。E社では予告も予告手当の支払いも行いませんでしたので解雇としての手順が適法に踏まれていないことになります。

ここは、弁護士が説明したとおり、所轄労働基準監督署長へ解雇予告除外認定を受ける方向で検討すべきでしょう。

ここで注意すべきは、単に「無断欠勤が二週間以上続いた。」ということではありません。「出勤の督促に応じない場合」という点がポイントです。E社では、Y社員の無断欠勤の間にこの督促をしておくことが必要でした。もっともY社員のように行方不明状態のケースでは、出勤の督促を行おうにも、有効な方法というと、公示送達の方法によるなど総務部長が考えるように面倒なものであったことは事実です。しかし、面倒だからと就業規則で定められたルールに沿って処置しなかったことが、本件の一番の問題であることを反省しましょう。

また、会社によっては、無断欠勤が一定期間継続した場合に退職扱いにするなどと就業規則に定めていることもあります。これは、休職期間が満了し復職できない場合に退職扱いとすることと同じように、無断欠勤が継続し就業規則等で定めた一定の期間が経過した時点で退職扱いとする方法です。これは行方不明となった社員に適用することができますが、この一定期間をどの程度とるのかは慎重に決定します。
あまり短いと配慮に欠けてしまいますので、一般的には解雇予告の期間などを念頭に置いて30日程度、短くても2週間程度と定めているものが多いようです。
しかし、この規定があっても、無断欠勤した事情や行方不明になった原因によっては、自動的に退職扱いにすることが妥当でないケースが想像できます。急な病気や本人に過失等のない犯罪に巻き込まれたりした場合、ましてやそれが仕事上での逆恨みによるものだったりすればなおさらです。

もしE社にこのような規則があった場合は、母親に「就業規則に沿って退職扱いにしますが、今後所在が判明し、行方不明の間に特別な理由があれば、この取り扱いは変更することもある。」旨を伝えておき退職の処理を進めるべきでしょう。

今後の対策としては、就業規則の見直しと、ルール通りの運用を徹底することです。

なお、就業規則に示されていないような事由で懲戒解雇することは困難です。どのような場合にどのような懲戒を行うのか、もちろんこの懲戒には懲戒解雇も含まれますが、きちんと事例で分けて定義しておきましょう。

また、退職に関しても前述のように「一定期間の無断欠勤状態が継続した場合は退職扱いとする。」というような条文を追加することを検討してください。さらにこの期間が経過して退職扱いとなるにしても、後日出社した場合に備え、復職の余地を残しておけば妥当な運用といえるでしょう。

また、昨今メンタルヘルス不全による長期欠勤などが多発しています。安心して治療に専念できる環境を提供するために休職に関する規定を整備しておくことをお勧めします。休職に関する規定では、復職の要件や復職に際しての手順などを決めておきます。

特に、復職可否の判断のための診断書の提出義務、産業医や会社が指定する医師の診断について、さらに職場復帰支援策まで規定しておくことがトラブルを防ぐために大切です。また復帰できない場合に、解雇とするのか退職とするのかも、この決め方によって実際の手続等が異なってきますので注意が必要です。

このように、様々な観点から就業規則を見直しても、C社長のように性善説を掲げた経営者などは、社員が軽度の規律違反行為があっても、場当たり的な対応を行いがちです。本来はその程度に応じた処分を行うべきであるのに、「このくらいだから」「温情で」「面倒だから」などとルール通りの扱いをせずに放置しておき、これらが頻発したり、悪化してきてから「堪忍袋の緒が切れた。懲戒解雇だ。」となることが多いため、解雇権濫用の問題含め、トラブルが後を絶ちません。

何事も最初が肝心です。普段から社員をしっかりと指導・教育して、同時に管理職は就業規則のルールに沿って労務管理を行うことが重要です。

税理士からのアドバイス(執筆:山田 稔幸)

本件について、E社の両部長(使用人兼務役員)に関する報酬・労務賃金・賞与について税務上留意すべきこと、および彼らがE社の株式を持っている場合と持っていない場合の違いについて税務上の留意点をご説明いたします。

使用人兼務役員については、その支給する賞与のうち使用人部分として一定のものは損金の額に算入できるなど、一般の役員とは法人税法上異なる取り扱いとなっています。

使用人兼務役員の定義
法人税法上、使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等のように法人の機構上定められている使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事しているものをいいます。(法34?、法基通9?2?5)

しかしながら、次に掲げる役員は、経営上枢要な地位にあることから使用人兼務役員になれないこととされています。(法令71)
?代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
?副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
?合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員
?会計参与及び監査役並びに監事

したがって、例えば、総務担当重役、経理担当重役のように法人の特定の部門を総括しているものは、使用人としての職制上の地位を有していることにはならないため使用人兼務役員とはなれません。

ただし、中小規模の法人のうちには、例えば鮮魚小売業、喫茶店、鮨店等のようにその事業内容が比較的単純で、しかも使用人が少数であるため、法人の機構として職制上の地位を定めるまでもない場合もかなりあると考えられます。このような法人の平取締役が常時他の使用人と同様の職務に従事しているときは、使用人兼務役員になることができることとされています。(法基通9?2?6) なお、非常勤役員は、常時使用人としての職務に従事していないので、使用人兼務役員とされません。

使用人兼務役員が会社の株式を持っている場合の税務上の留意点
同族会社の場合には、次のことにも注意する必要があります。
同族会社の役員のうち次の???の要件のすべてを満たしている者は使用人兼務役員とはなれません。(法令71?五)
?その会社の株主グループにつき所有割合が最も大きいものから順次その順位を付した場合にその役員が次の株主グループのいずれかに属していること
イ 第1順位の株主グループの所有割合が50%をこえる場合におけるその株主グループ
ロ 第1順位及び第2順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合が初めて50%を超えるときにおけるこれらの株主グループ
ハ 第1順位から第3順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合が初めて50%を超えるときにおけるこれらの株主グループ
?その役員の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。
?その役員(その配偶者及びこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5%を超えていること。(法令71?五)
この場合の株主グループとは、株主等と特殊の関係のある個人及び法人をいいますが、具体的には親族および親戚等と考えてください。
(法2十、法令4、71?)
(注)所有割合を計算するに際しては、発行済株式の総数からその会社が有する自己株式を除いて計算します。
なお、持株割合の判定は、故意に一時的に持株比率を調整する等課税上弊害がない限り、事業年度終了の時の現況により判定を行うこととなります。

判定の例
<例1>E社の営業部長が6%所有している場合で、株主グループが
?第1順位 C社長グループ30%
?第2順位 総務部長グループ15%
?第3順位 営業部長グループ15%のとき
この場合には、営業部長の属する株主グループは、
? 30%+?15%+?15%=60%>50%
となり、はじめて50%を超える場合におけるその株主グループとなります。営業部長の属する株主グループの所有割合は15%>10%であり、営業部長個人の所有割合も6%>5%で5%を越えていることから、営業部長は使用人兼務役員とはなれず、一般の役員とされます。

<例2>E社の営業部長が6%所有している場合で、株主グループが
?第1順位 C社長グループ55%
?第2順位 総務部長グループ15%
?第3順位 営業部長グループ15%
この場合には、C社長グループの所有割合が?55%>50%となり、営業部長の属する株主グループははじめて50%を超える場合におけるその株主グループとなりません。この例では、営業部長は使用人兼務役員となります。

使用人兼務役員に対して支給される給与及び賞与
まず、使用人兼務役員に対する給与ですが、役員部分は通常の役員給与と法人税法上同様に取り扱われますが、使用人部分はいったん使用人給与とされ、次に述べる過大役員給与の判定の適用を、通常の役員給与と同様に受けることになります。一方使用人兼務役員に支給される賞与については、役員部分は通常の役員賞与と同様に原則損金不算入となりますが、使用人部分の一定のものについては損金の額に算入されます。

使用人兼務役員がいる場合の過大役員給与の判定における留意点
法人が役員に対して支給する給与は、委任の対価として支給されるものですから、原則として損金の額に算入されます。しかし役員給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されないこととされています。(法法34?、法令70一)この判定の際に実質基準と形式基準があるのですが、形式基準での判定の際に使用人兼務役員がいる場合には注意が必要です。
形式基準とは、その事業年度において役員に対して支給した給与の額が、定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により定められた給与として支給することができる限度額を超える場合には、その超える部分の金額は、損金の額に算入されません。

形式基準において過大役員給与に当たるかどうかの判定には、使用人兼務役員も役員ですから、使用人兼務役員に支給した給料は、たとえ使用人としての職務に対するものが含まれているとしも、その全額を役員給与として取り扱い、過大役員給与にあたるかどうかの判定をします。
ただし、定款の規定または、株主総会等の決議において、役員報酬の支給限度額には使用人兼務役員の使用人分相当額を含めないことを明らかにしておけば使用人兼務役員の使用人分の給料を含めないで判定することができます。

同族会社の場合には、株式の所有割合によって使用人兼務役員になれる場合となれない場合があります。使用人兼務役員となれなかった場合には、会社は使用人分として賞与を支給したとの認識であっても法人税法上は、損金不算入の役員賞与となりますので注意が必要です。

社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
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SRネット東京 会長 藤見 義彦  /  本文執筆者 弁護士 市川 和明、社会保険労務士 朝比奈 広志、税理士 山田 稔幸



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