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中小企業経営者への法務実務アドバイス(第89回)
採用取り消し?
まだ前の会社に在籍しているじゃないか!
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SRアップ21北海道 (執筆担当は文末) |
| ■ 事例概要 |
「そろそろ創立10年だな、わが社も人事総務の責任者が必要になってきたかな…」T社長が営業統括の専務と調査分析統括の常務に話しかけます。R社はそのほとんどが営業、調査・分析部隊で、人事総務関連業務は、T社長と2名の派遣社員でまかなっています。
「そうですね、最近は変わった人間も増えているし、規則や評価制度にも積極的に取り組む時期かもしれませんね、社長が全部やるわけにはいかないでしょう」と専務が返しました。
「何でも社長の一声で決まるのは、ときに不公平、という話も社員から出ているようです」と常務も発言しました。
その後、R社は採用面接を開始し、この日の役員会から3週間たった日に、数人の人事部長候補からHが選ばれました。Hとは、現在の会社における引継ぎ業務のため、3ヶ月後にR社へ入社すること、支度金50万円ということで話がついています。
ところが、「社長!あのHですが、数年前にうつ病になったことがあるそうですよ、うちの会社にHと同じ会社にいたことがある社員がいまして、その者からの情報です」と専務が社長に駆け寄ってきました。
「何…、それはまずいな、そんな危ないやつを入社させたら大変なことになる…採用取り消しだ、早くHに連絡しておけ、理由は…そうだな…仕事上断れない縁で他の者を採用しなければならなくなった、とでも言っておけ」とT社長が指示しました。「まったく、紹介会社は、もっとよく調べてもらわないと困るよな…」
次の日からHの電話攻撃が始まりました。
すでに退職届を出している、引越しの準備もしている等々、T社長も疲れ果ててしまい「事情があって雇えなくなったから仕方ないでしょう、もう二度と電話してこないでください、あまりにしつこいと営業妨害、いや脅迫で訴えますよ」と言ってしまいました。 |
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| ■ R社の概要 |
創 業: 平成11年 本社 札幌市
社 員 数: 18名 契約社員9名
業 種: 市場調査業
経営者像: 衣服に関する流行色の調査分析、ペットフードのモニター調査などを請け負うR社のT社社長は48歳、突出した企画、プレゼンテーション能力で、R社を成長させてきました。ここ数年は、人材紹介会社を通じて社員を採用しています。「すべての時間は仕事に費やす」がポリシーのワンマン社長です。
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| ■ 事故発生の背景 |
最近は人材紹介会社を利用する企業が増えていますが、紹介する人物の経歴や実力などに関するトラブルも発生しています。紹介会社の言うことだけではなく、自社での面接もしっかりしたいものです。
新卒の内定取消が問題となりましたが、中途採用の場合の採用取り消しは、どのように処理すべきだったのでしょうか。
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| ■ 経営者の反応 |
H社員の電話攻撃がなくなってやれやれという1週間後、紛争調整委員会からあっせんの案内書一式が郵送されてきました。
「Hのやつ…訴えたよ」T社長が専務と常務に封書を渡しました。
「しかし社長、仮に解雇だとしても、入社予定日より2ヶ月以上前に採用取り消し連絡をしたのですから、解雇予告手当も必要ないはずだし、何でしょうね…」と専務が言うと「採用取り消しの無効と支度金の支払い、慰謝料とか書いてありますよ…」と案内を見た常務報告しました。
「なんだと、採用を取り消しただけで、Hはまだ他社の社員だし、そんなばかなことはないだろう…」とT社長は激怒しました。
専務と常務は顔を見合わせ、「われわれもそう思いますが、ここは専門家に相談したほうがよくないでしょうか、あっせんを無視して、裁判所に行かれたらやっかいですよ、新卒の採用取り消しに100万円支払った企業もあるくらいですから…」とT社長に進言しました。「そうだな…それでは頼りになりそうな専門家を探してくれ、Hがうつ病歴を隠していたこともあるしな、言われっぱなしというのも癪だよ」
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