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中小企業経営者への法務実務アドバイス(第40回)

正社員と契約社員の違いは何ですか?
契約社員に対する処遇が火種に!!


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弁護士からのアドバイス
正社員以外の労働者としては、本件で問題となっている契約社員をはじめ、パ−トタイマ−、アルバイト、準社員、嘱託、非常勤、臨時社員、派遣社員など、さまざまな名称で呼ばれる者が現実に存在しますが、これらについては、法律上明確な定義はなく、それぞれの区別も明確ではありません。契約社員と呼ばれる者であっても、実際の雇用形態は、企業によってまちまちであり、パ−トタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)にいうパ−トタイム労働者(同じ事業所で働く通常の労働者に比べて、労働時間が短い働き方をする人)に該当する人もいれば、臨時社員、専門的な技術や資格を有する人、在宅勤務者などを契約社員と称している例もあります。また、賞与や退職金、福利厚生制度等の有無・内容も企業によりさまざまです。さらに、有期雇用契約の形式がほとんどですが、契約期間を定めていないケースもあります。

さて、本件のP社は資格試験予備校であり、同社において契約社員とされているのは、各科目の講師のようですから、専門的な技術・資格を有する人を、期間を定めて雇用し、これを契約社員と呼んでいるものと思われます。

H社長は、「契約社員には賞与も退職金も必要ないし、いつでも解雇できるから使いやすい」、「契約社員として納得のうえで働いているのだから、正社員並みに給与を上げろというのは本末転倒だ」と信じているようですが、他方、「契約社員といっても、契約期間があるだけで業務上正社員と何が違うのか」については、わかっていない模様です。

このような認識のH社長に対して、契約社員らは、「同一労働同一賃金」の原則を掲げて、契約社員の労働条件の改善を要求してきたわけです。

「同一労働同一賃金」の原則は、従来は主として男女間の賃金格差を問題とする局面において主張されたものでしたが、この問題が裁判例の積み重ねや立法(平成9年改正の労基法4条等)により落ち着きつつある現在では、雇用形態の異なる社員間の賃金格差について援用されることが多くなっています。では、「同一労働同一賃金」の原則とは、どのような意味で、使用者をどの程度拘束するものなのでしょうか。

これが問題となった裁判例としては、長野地裁上田支部平成8年3月15日判決があります。この事件は、正社員につき年功序列型賃金体系を採用していた企業が、実際の勤務時間や勤務日数、業務内容は正社員と同じであるにもかかわらず、臨時社員として採用された労働者については異なる賃金体系を適用していたため、勤続が長くなるほど正社員と臨時社員間の賃金格差が大きくなっていたことを問題として、臨時社員ら(形式上は2ヶ月単位の契約を更新していたが、25年を超える契約更新者もいた)が格差分の賃金の支払を求めたものです。

これに対して裁判所は、同一労働同一賃金について、これを明言する実定法の規定はいまだ存在しないとし(法律よりも上位の効力を有する、わが国が批准した条約の中にこれを明言したものが存在すると主張する反対説がありますが、裁判所が採用するところとはなっていません。ここではこの議論には深入りしません)、同一労働同一賃金の原則は、不合理な賃金差別を是正するための一個の指導理念とはなり得ても、これに反する賃金格差が直ちに違法となるとはいえないが、この原則の基礎にある均等待遇の理念は、賃金格差の違法性の判断において、一つの重要な判断要素として考慮されるべきものであって、その理念に反する賃金格差は、使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして、公序良俗違反の違法を招来する場合がある、との一般論を展開したうえで、この事件のケ−スについては、臨時社員らの賃金が同じ勤続年数の正社員の8割以下となるときは、公序良俗に違反して違法である、と判示して、その差額分の支払を会社に命じました。

この判決が示した正社員の賃金の8割という基準は、あくまでこの事件の例についての判断ですので、一般化はできませんが、ある程度参考にはなるものと思われます。P社の実情がどうなっているのか、個別具体的に検証してみる必要があります。なお、ここでいう賃金は、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの(労基法第11条)を意味すると解されますので、賞与や退職金も含むことになります。従って、正社員に限定して支給されている賞与や退職金を含めて、契約社員との格差を検証しなければなりません。

また、契約社員らの要求には、休暇制度に関するものもあり、おそらくP社は、契約社員には年次有給休暇を認めていなかったものと思われますが、労基法第39条1項の要件を充たす労働者に対しては、名称が契約社員であっても、年次有給休暇を与えなければなりません。

さらに、「契約社員はいつでも解雇できる」とのH社長の認識は、誤りと言わねばなりません。契約更新が反復継続していた場合には、契約期間満了時の契約更新拒絶が解雇に該当すると解釈される可能性が多分にあり、そうなれば解雇の正当事由が必要となります。労働条件改善要求をしたことが解雇の正当事由にならないことは言うまでもありません。

正社員に比べて格段に劣る処遇に嫌気がさして、優秀な契約社員が次々退職するようでは、P社の営業上もマイナスと思われます。契約社員は、安上がりで雇用調整の簡単な、便利な労働者、という考えは改めるべきでしょう。契約社員に対する具体的な対応方法は、社会保険労務士に任せます。

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