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中小企業経営者への法務実務アドバイス(第103回)

裁判員になってしまうと過労になる? 「君の仕事でしょ!」


SRネット鹿児島 (執筆担当は文末) 


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事例概要
町工場という表現がぴったりのH社では、今日もW社長と3人の社員が、黙々と作業を行っています。大量生産はできませんが、その技術の確かさで固定客をしっかりとつかんでいます。ある日のこと、仕事が一段落した頃に、勤続23年のR社員が社長に相談を持ちかけました。その話は、R社員が裁判員に選ばれたということでした。「それは大変だなぁ、断ってもダメだったか…仕方ないから役目はきちんと果たさなければならないが、うちの仕事が停滞するのも困るなぁ…わしも歳だし、そう無理はできないからね…」W社長が悲しそうに話すと、「裁判員といったって、夜まで拘束されるわけではありませんから、終わったら仕事しますよ、大丈夫ですよ」と応えるしかないR社員でした。

53歳のR社員は、裁判員候補となったときも、そして今回裁判員になった後も精力的に両立を図りました。しかし、裁判所では居眠りしたり、夜間の作業では、工具で手を切ったりと、徐々に疲労の度合いが進んできました。

慌て始めたのはR社員の奥様です。「このままじゃ、お父さんが死んでしまう」と仕事を休むか、裁判員の仕事を欠席するか、と家族で話し合いますが、「仕事は納期が迫っている、裁判所には会社を悪く言うことはできないし、他の人の手前もあるから自分だけ欠席できない…」と埒があきません。

たまりかねたR社員の奥様は、W社長にR社員の状況を話しながら直談判しました。しかし、「会社の信用がなくなったら、裁判員どころではないよ、もう少しだから、R君には何とか頑張ってもらいたい、それとも、わしに徹夜で働け、とでも言うのかい」と返されると、何も言えなくなってしまいました。

R社員は、「大丈夫だよ、もう少しだから…」と力なく笑いました。

H社の概要
創 業   昭和48年 本社 ○○市 
社員数   3名 パートタイマー 3名 
業 種   金属加工業
経営者像  H社のW社長は67歳、創業社長で自らも金属加工に熟練した技術を駆使し、日々の業務を行っています。社員3名がそれぞれの工程を受け持っていますので、一人欠けるとW社長がそのカバーをしなくてはなりません。温厚な性格ですが、仕事には厳しいW社長です。
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事故発生の背景
○○君しかこの仕事はできない、今やっている仕事の方法が一番で他の方法は考えられない、といった決め付け的な考えから脱却できない中小企業経営者は、まだまだ多いと思います。このような考え方が有給休暇の取得促進を阻害する要因でもあるのでしょう。

“もしも、わが社に裁判員が!”というシミュレーションをある程度行っていないと、R社員のようなケースが多数発生するかもしれません。

経営者の反応
「やれやれ、君の奥さんも心配性だね、人間やる気があれば何とかできるものさ、もっと会社のことを考えてくれないと困るよな」とW社長がR社員に話しかけると、「他の裁判員の方は、みなさん特別の有給休暇を付与されていますよ、私は確かに昼間は休んでいますが、こうやって夜は仕事しているのです。労働基準法は、会社の大小にかかわりないとも聞くと、何だか納得できない気もします…給料も毎月定額だし…」思いがけないR社員の言葉に、多少たじろぎながらも「そうはいっても、零細企業の悲しさだよ、誰が仕事を変わってくれると言うのだね…」とW社長が返すと、R社員は返答せず、呼んだタクシーの音に気づくと「今日は失礼します…」といって会社を出て行きました。

「少し対応がまずかったかな…」反省したW社長は、本来どうすべきか、という点も含め、今後のR社員への処遇について、どこかへ相談しようと考え始めました。
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